ではさっそく『宇宙兄弟』のエピソードを通して、「保全性が高い」人の行動パターンと、その生かし方を見ていきましょう。

 子どもの頃から、宇宙飛行士になるという同じ夢を追いかけてきた2人。拡散性が高いヒビトは、まっすぐに夢を追いかけ、兄より先に夢をかなえます。

 一方、保全性が高く慎重なムッタは、ある時から夢をあきらめ、自動車開発のエンジニアの道に進みます。失敗することを恐れ、挑戦から降りたのです。

 そんな彼の口癖は、「ドーハの悲劇の生まれ。悲劇には慣れてる」。

1巻#1 「弟ヒビトと兄ムッタ」
1巻#1 「弟ヒビトと兄ムッタ」
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 ハードルを軽々とクリアして成長していくヒビトに劣等感を抱きながら、自分のことを運のないヤツだと卑下しています。「失敗することが運命だ」などと言い訳して、自信のなさをはぐらかして逃げるのです。

 「保全性が高い人」が「拡散性が高い人」に対して感じる感覚が、とてもよく表れています。

1巻#1「 弟ヒビトと兄ムッタ」
1巻#1「 弟ヒビトと兄ムッタ」
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「しっかり準備したい」のが保全性

 だからといって、保全性が高い人=後ろ向き、ということではありません。

 『宇宙兄弟』の、特に序盤で描かれるムッタは、確かにどちらかといえば後ろ向きで、パッとしない印象です。なぜでしょうか。

 FFS理論では、適度な負荷(ストレス)がかかった状態のときに、その人の個性がポジティブな方向に発揮され、過度なストレス状態または過小なストレス状態では、その人の個性がネガティブな方向に発揮される、と考えます。

 「過小なストレス状態」は、ストレスが少ないからいいのではないかと思われるかもしれませんが、人が生き生きと活動するには、適度な刺激が必要です。例えば、毎日決まりきったルーティン作業ばかりでは、刺激がなさすぎて退屈します。また、職場で冷や飯を食わされている人も、自分の思うような活躍ができずに腐ってしまいます。

 あきらめモードから抜けられないムッタは、しぼんだ風船のようなもの。過小なストレス状態のため、彼が本来持つ個性の強みを発揮できないでいると考えられるのです。

 では、保全性の個性とは本来どのようなものでしょうか。
 ムッタの保全的な性質がよく表れているシーンがあります。

 子どもの頃、幼い頃から兄弟を見守り続けた女性科学者、シャロンの家で音楽のセッションをしようとしたときのことです。

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 シャロンの家には、トランペットをはじめ、ピアノ、ギター、太鼓、ハーモニカなどいろんな楽器がありました。「どれをやってみたい?」と聞かれたムッタは、「全部!」と答えます。どうしてでしょうか?

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