冒頭にしたお話をここで振り返りましょう。日本人の場合、気質に着目すると、保全性が高い人は全体の65%、拡散性が高い人は35%です。後天的な因子で圧倒的に多いのは、受容性です。受容性は、文字通り「相手を受け容れ、気づかう」個性です。実に日本人の6割弱が、「受容性と保全性が高い人」、言い換えれば「他人を慮(おもんばか)る慎重な人」なのです。

 ちなみに、拡散性が高く受容性が高い人も25%います

 保全性が高い人と拡散性が高い人では、思考行動パターンが大きく異なります。そのため、両者の間でどうしても生じる誤解や衝突が、組織や企業における人間同士のコミュニケーションを妨げたり、個人の成長の足を引っ張ったりしている、というのが我々の認識です。

 逆に言えば、自分のタイプと、相手のタイプを知れば(日本人の場合は、保全性タイプと拡散性タイプが理解しあえれば)、無用な摩擦は減り、お互いの意図するところをくみ取りやすくなり、仕事がスムーズになるのはもちろん、成果や生産性も上げやすくなる、ということです。

 自分がどのタイプなのかを知りたい方は、こちらでお試しください。

 結果はいかがでしたか。我々の経験から言えば、ある特定の個性の持ち主ならば、成功する確率が高い……わけではありません。行動力があるから拡散性の高い人のほうが成功しやすいように思えますが、決してそうではないのです。

『宇宙兄弟』は、保全性の高いタイプがエースに育つ物語

 地道に、コツコツ真面目にやって、他人を慮る慎重派。そんな「保全性」が高い人がエースに成長していく姿を描いた、世にも珍しい物語があります。

 それが、宇宙飛行士を目指す兄弟の奮闘を描いたベストセラーコミック『宇宙兄弟』(小山宙哉著、講談社)です。

左が弟の南波日々人(ヒビト)、右が兄の南波六太(ムッタ)
左が弟の南波日々人(ヒビト)、右が兄の南波六太(ムッタ)

 個性のまったく異なる兄弟が主人公です。先に宇宙飛行士になった弟の南波日々人(ヒビト)は、興味あることなら積極的に動き、夢を直線的に追いかける、典型的なヒーロー物語の主人公です。彼の言動を観察すると、「拡散性」が高いタイプと言えます。

 一方、兄の南波六太(ムッタ)はそうではありません。優秀な弟と自分を比べて卑屈になり、いつの間にか宇宙飛行士になる夢をあきらめてしまうようなフツーの人です。ムッタの言動からは、「保全性と受容性」が高いと推測できます。まさに日本人の6割を占める「他人を慮る慎重な人」タイプなのです。

 ところがムッタは、読者の想像をはるかに超える活躍を見せます。周りの人たちの支えや、持ち前の実行力と発想力で困難を切り抜け、宇宙に行くという夢を叶えるのです。

 どこにでもいそうな“ややネガティブ”な人物であるムッタが、誰もが憧れる宇宙飛行士になって活躍するところに、この漫画の面白さがあります。また、ムッタに共感を覚え、自分を投影して応援している読者も多いのです。

 『宇宙兄弟』には、ムッタとヒビトの兄弟のほか、こだわりの強い上司やドライな先輩など、独特なキャラクターが登場し、ビジネスパーソンも「あるある」と共感できるエピソードが次々に生み出されていきます。

 (日本人の6割を代表する)ムッタは、どのようにして個性豊かな周りの人たちを味方につけ、また仲間と協力して窮地を脱したのか。「保全性」と「拡散性」を主な軸として人の個性への理解を深め、生かし方を学んでいこう、というのが、この連載の狙いです。

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