こちらでは、「Five Factors and Stress (FFS)」(開発者・小林惠智博士)の考え方について、解説させていただきます。
FFSは、人間の特性を5つの因子、「凝縮性」「受容性」「弁別性」「拡散性」「保全性」に整理し、それぞれの因子の数を比較することによって、その人が示す反応・行動を計測するものです。
人間を5タイプの「どれか」に分類するもの、ではないことにご注意ください。5つの因子はどの人の中にも存在します。FFSでは、5つの因子の多寡とその順番によって、個性が理解できる、と考えます(根拠となっている論文・調査結果などはこちら)。
5つの因子のうち「保全性」「拡散性」は気質(先天的)に起因し、残る3つは社会的(後天的)な影響が大きいと考えられます。FFSを用いたコンサルティングを行っている我々、ヒューマンロジック研究所の調査によれば、日本人の気質だけに着目すれば65%は「保全性」の因子が高く、35%が「拡散性」となり、また、「凝縮性」と「受容性」を比較すると「凝縮性」の因子が高い人が20%、「受容性」は80%となりました。
組み合わせると「受容性・保全性」が55%、「受容性・拡散性」が25%、「凝縮性・保全性」が10%、「凝縮性・拡散性」が10%という出現率になります。
従って、本連載は、日本人の大多数を占めると考えられる「受容性・保全性」のタイプが、自らの特性、ストレスを受ける理由を知り、能力を最大限に発揮する手がかりを提供することを第一の目的と考えています。もちろん、他のタイプについても適宜、役に立つ視点を提供していきます。
また、この分け方は簡易なもので、個人の特性を詳細に把握するには、5つの因子の多寡の順番やバランスをきめ細かく見ていくことが欠かせません。そして、一人ひとりの因子を把握することで、個人・組織の問題点の多くに解決策が見えてくる、と我々は考えています。
FFSはその人の「長所」を示唆してくれる
連載で登場していただく『宇宙兄弟』(小山宙哉)の主人公、南波六太さんを例に挙げましょう。FFSのテストを受けていただいたとすれば、おそらくこういう結果になります。
南波六太さんは、「受容性・保全性・弁別性」が高い人です。なお、因子の数値の高さは何らかの「評価」ではありません。並び順が重要です。
この順序の人はどんな個性の持ち主でしょうか。
「受容性」が高い人は、柔軟で面倒見が良い。「保全性」の高い人は、改革よりは、慎重に改善しつつ、積み上げていくことが得意な人。「弁別性」の高さから、合理的な判断もできる人材、と思われます。
仕事においては、周囲との関係を大切にしつつ、継続的に工夫改善を行うことに向いていそうです。そして、一つの枠組みの中で無駄なく合理的に仕上げていくタイプ。安定期に重宝される人材です。一方で、変化や挑戦には尻込みしがちかもしれません。
ちなみに、筆者(古野)は「凝縮性14.受容性10.弁別性15.拡散性17.保全性4」と表されます。「拡散性・弁別性・凝縮性」で、日本人には少ないタイプです。珍しい個性なので、よく誤解されます……。
(ご自身で診断を行えるサイトを現在準備しております。オープン次第、こちらと連載の中でご紹介いたしますので、どうぞお楽しみに)
もちろん、理論そのものの押し売りをするつもりはまったくありません。要は「役に立つか、立たないか」だと思います。例えば人間関係の中で、自分に理解しにくい言動に出会ったときに、「これは、自分とは違うタイプの考え方が背景にあるのでは」と気づくことができたら、ムダな誤解や気まずさを避けられる。そのためのヒントになれば、連載の筆者としては十分に嬉しいことです。
Powered by リゾーム?