「共感」しか武器がない学生が社会に出ると……

 「受容性」の高い人が企業に入社すると、最初はその面倒見の良さを武器に、お客様や社内からある程度の評価を得て、初級管理職(一般的には課長レベル)までは昇格できるでしょう。

 例えば会議では、「シーンとした会議だと皆が落ち着かないだろうから、何とかしてあげたい」と、司会進行役を買って出ます。学生時代から代表や主将の経験もあるので、議事進行は自分が担うべき役割、と思っているところもあります。

 周りの意見やアイデアを尊重しながら、柔軟に会議や打ち合わせをリードしていくので、周りも安心して任せることができます。メンバーに共感を示しながら、チーム力を引き出すことにもたけています。

 しかし、課長よりさらに上を目指そうとすると、話は別です。

 ポジションが上がるほど、スキルや豊富な経験知を持つ同僚や諸先輩たち、クセの強いお客様とうまく渡り合っていかなければなりません。そして当然ながら、最も苦手とする「利益が相反する」状況下での決断を迫られる場面も増えていきます。

 そのようなときに、学生時代のようにあうんの呼吸で自分のことを理解してくれる仲間や、コミュニティで支えてくれたナンバー2のような存在が身近にいればいいのですが、会社ではそうでないケースが多いでしょう。

 そうなると、「受容性」の取りえである「面倒見の良さ」や「共感力」だけでは、重要事項を決定し、組織活動を推進していくことができなくなります。これが、「受容性」の高い人が伸び悩む原因です。

 どちらを取るか、どちらにも不満を感じてほしくないから決められない。
 そして行き着く先は、「今日は決められないから」と先延ばしの決定をするだけのリーダー、あるいは、自分の考えを持たずに、「会社方針にのっとります」と上からの指示を流すだけのリーダーになっていきます。

 よく考えれば、自分が組織を委ねられた理由から推し量ることで、決断すべきポイントが見えてくるはずなのですが……。

 こう書き連ねていくと、なんだか、「受容性」の高い人はリーダーに不向きだと言っているように思われそうですが、決してそんなことはありません。自分の「強み」に合っていない武器を使っているとこうなってしまう、というお話です。

 就活編の冒頭から申し上げている通り、自分に合わないやり方ではなく、「受容性」の強みを活かしたやり方に変えれば、あなたの伸びしろに限界はないのです。

 利益相反で、どちらかに「決める」こと自体がストレスを生む。
 ならば、利益相反という前提条件自体を溶かしてしまえばいい。
 「受容性」の強みを活かした意思決定のキーワードは、「丁寧な合意形成」です。

 

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