失敗するケースその1 とにかく対立回避を最優先、そんな自分がイヤに

 彼が部のために良かれと思ってやっていたことが、一部の部員には不満だったようで、彼らは反抗的な態度を取るようになりました。そこで彼が「まぁまぁ」と、なあなあで丸く収めようとしたところ、逆に不満が爆発し、火に油を注ぐ結果となってしまいました。

 「自分は厳しいことが言えません。部内の亀裂を何とか修復したいのですが……、皆のことを考えれば考えるほど、どうしたらいいか分からなくなって。こんな自分が情けなくて、自信をなくしています」

 「受容性」の高い人は、皆の意見を尊重しながら、合意形成に導くことができる柔軟性を持ち合わせています。しかし、これは裏を返せば、誰かの意見を切り捨てるような意思決定は苦手だということです。「できれば対立は避けたい」。これが本音です。

 この学生がうまくチームをまとめられないのも、それが原因です。皆の気持ちをおもんぱかるあまり、「誰も傷つけないための方策」を取ろうとします。厳しい言い方をすれば、誰に対しても“いい顔”をしようとして、根本的な解決策を決めることができないのです。

 そして、ビシッと厳しいことが言えない自分を、ふがいなく思っている。その心の奥には、「リーダーなら、その場を仕切らなければならない」とか、「強い指導力でメンバーを導かないといけない」といった強いリーダー像への憧れが見え隠れします。

 「保全性」が高い人の回で申し上げたことの繰り返しになりますが、「自分はこうありたい」という憧れと今の自分を比べても、ただ苦しくなるだけです。

 さて、彼のような人が、就活で面接に臨むとどうなるか。

 最初のうちは、「リーダー経験という肩書の魅力」や「人当たりの良さ」で高い評価を得られるかもしれません。しかし、1次、2次……と進むにつれ面接者のレベルが上がり、リーダーとして意思決定に至るプロセスや、意思決定後の実効性などについて詳しく問われると、途端にボロが出始めます。

 例えば、「仲間と衝突したとき、どう対応しましたか?」と面接官に質問された場合、仲間との対立を避けて根本的な問題解決に至らなかった人は、「えっと、それほど強く自分の意見を主張したわけではないですが……」と口ごもるしかありません。あるいは、強い指導力でチームを引っ張ったように話を盛ろうとしても、個性に反した内容であることをプロの面接官に見抜かれてしまうでしょう。

 いずれにしても、こいつは語れるエピソードがない、肩書だけの「リーダー」だったのか、という状況に陥ってしまいます。

失敗するケースその2 他人の支援を「自分の実力だ」と勘違い

 「受容性」の特徴である、「周りの状況を受け容れる柔軟性」は、「決められない優柔不断さ」と紙一重です。

 ですから、「受容性」の高い人は、決められないときは意思決定を先延ばしにしようとします。

 ただし、例外があります。周りに「凝縮性」の高い人や「拡散性」の高い人がいて、彼らとコンビを組んでいる場合です。

 「凝縮性」の高い人は、価値観が明確なので、ズバッと決めることができます。また、「拡散性」の高い人は、戦略的思考を持っている(言い換えると、現状維持に興味があまりない)ので、チームの方針を語ることができます。

 「自分たちはこうあるべきだと思う」とか、「あんなこともやったら面白そう」といった彼らの意図や思いを「受容性」の高い人が汲み取り、彼らのために動くことで、結果的にチームを前に進めていける。そんな理想的な組み合わせが生まれることがあるのです。

 以前、サークルや異業種交流会などのコミュニティの実態を調査して分かったことがあります。ある程度の規模に拡大し、長く続いているコミュニティの特徴は、「受容性」の高い代表者がいて、「拡散性」と「弁別性」が共に高いナンバー2がいる、ということです。

 「受容性」の高い代表者は、いつもニコニコして懐の大きさを示し、誰もが参加しやすい和やかな雰囲気を醸し出しています。

 一方、方針を大胆に提案したり、内部のゴタゴタを処理したりしているのは、「拡散性」と「弁別性」の高いナンバー2だったりします。ちなみに「弁別性」とは、白黒をはっきりさせ、合理的な判断を好む因子です。「拡散性」と「弁別性」が共に高い人は、「参謀のように動くこと」を面白がりますから、そんな彼や彼女の気持ちもくんで、「受容性」の高い代表者が全体を取りまとめているのです。

 ところが、第三者には裏で動く参謀の働きはよく見えないので、代表者の優秀さだけが浮かび上がるというわけです。そこで本人も、「コミュニティがうまく回っているのは、自分のリーダーシップゆえだ」と勘違いしてしまうのです。

 実力を勘違いした人が就活で面接に臨むと、これまでの実績を自信満々で語ります。本人は「自分が正しい意思決定をしてグループを導いてきた」と思い込んでいるので、自分がリーダーシップを発揮したエピソードとして説明することになります。

 しかし、面接官から見ると、「本人が強い意志を持ってリードしてきた」というよりは、「ナンバー2のアイデアを採用し、合意した結果」にしか映りません。よって「この学生は自己認識が甘いな」という評価になってしまいます。

 この学生が面接官のチェックを擦り抜けて、運よく内定を勝ち得たとしても、入社後に「期待されたほど活躍できていない」「なぜか分からないけれど伸び悩んでいる」という問題が起こり得ます。それを次に見ていきましょう。

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