「慎重さ」をポジティブにアピールしよう

 最近の「保全性」の高い学生たちには、「慎重」というフレーズがネガティブに聞こえるようです。

 無理もありません。就活で企業側が求める人材としてよく聞くフレーズは、どれも「革新」「改革」「挑戦」「創造」といった、妙に前向き過ぎるものが多く、「慎重」という言葉はまず出てきません。採用側に「あなたの会社は、拡散性が高い人がそんなに好きなんですか、活躍できるんですか?」と聞きたくなることもあります(これは同時に、拡散性の人の就活の注意点にもつながります)。

 こんな風潮では、「慎重」=「動かない」「挑戦的ではない」というイメージになってしまいます。そこから逃れるために、「活動的な自分」を偽ってアピールしようとする。でもそれは「拡散性の罠」にハマっている証拠です。

 「保全性」の高い人は、慎重だからこそ、「準備段階でたくさんの情報を集め、想定されるリスクも検討した上で、具体的な計画に落とし込む」ことができます。リスクヘッジも得意で、最悪の状態を回避する策もちゃんと考えます。

 さらに、「粘り強くて、できるまで諦めない」ことを得意にしています。「周りから『できない』と思われるのが嫌」だから、できるようになるまで努力を惜しみません。だからこそ、時間がかかっても、何事も成功に導くことができるのです(その点、「拡散性」の高い人は途中から飽きてしまいがちで、物事を達成したり、刈り取ったりすることに興味を持てないことが多々あります)。

 つまり、会社がプロジェクトを実際に進める際には、「慎重さ」はとても重要な特性です。ビジネスパーソンとして仕事を取り組む上で有効な武器になるのです。

「海外留学」の経験をアピールするならば

 その自分の持ち味、「慎重さ」を、面接やエントリーシートでどう伝えるのか。ここが重要です。慎重さを魅力として伝える方法が分からないから、ぱっと目を引くエピソードに頼りたくなるわけですが……。

 実例で考えてみましょう。

 例えば、「海外留学」の経験を面接で話すとします。
 ちなみに、最近の「保全性」の高い学生は、面接で以下の活動をアピールする傾向があります。

  1. 海外留学
  2. NPO/NGO/ボランティア団体に所属して積極的に活動している(海外にも行っている)
  3. 体育会やサークル、学生自治会などの役職を経験している

 並べると、そのキラキラっぷりに「どこが慎重派の保全性なんだ」と突っ込みたくなるかもしれません。

 これらの活動は、従来は、未知の領域に臆せず飛び込んでいける「拡散性」の高い学生に多かったものです。ところが今はSNSなどで情報入手が容易になり、留学もNPOも、すでに「こうすれば大丈夫」なルートが存在しています。

 すでに道ができていれば、山登りのようにしっかりステップを踏んで進んでいくのは「保全性」の高い人の得意中の得意。「拡散性」でなければできなそうな見栄えのするエピソードが「保全性」でも手に入る! と、学生の間にどんどん広がっています。留学、NPO、役職、私はこれを「保全就活生の『三種の神器』」と命名しました。ちなみに、拡散性の高い学生はあまり流行を気にせず、自分のしたいことを好きにやっているので、この手の「三種の神器」に該当するものが生まれにくいようです。

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