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12巻#112 「海人と宇宙人」

 『宇宙兄弟とFFS理論が教えてくれる あなたの知らないあなたの強み』の中で、日本社会の組織で生きる人の多くは、もしリーダーになるならば、「猛獣使い」を目指すべきではないか。それが「強み」を発揮できる道ですよ、とお話ししました。

 組織を率いるには、自分とは異なる個性の人を側に置くことが必要(異質補完)。リーダーとなる人は彼ら彼女らの強み、弱みを理解して、力を引き出そう、ということです。宇宙兄弟とFFS理論(開発者:小林 惠智博士、詳しくはこちら)を通して、個性を理解し、チームとして強くなる方法を見つけるのです。

 チームビルディングについては様々な考え方があり、書籍が出版され、ウェブでも大量の情報が流れていますが、やはりこれも、人気コミック『宇宙兄弟』から、分かりやすく学ぶことができます(書籍の仕掛け人であるこのマンガの初代編集者、佐渡島庸平さんのインタビューを参照。「コルク佐渡島氏『みんないいアイデアに1度しか触れない』」「『自分を嫌いな上司』の真実が分かる本」)。

 本連載も『宇宙兄弟』をFFS理論を通して学んでいくのですが、今までとはちょっと違った角度から考えてみたいと思います。

 我々日本人が、「いいチーム」に必要な要素を理解するのに最適なバズワードがあります。「心理的安全性」です。はい、生産性の高い組織の必要条件として、よく耳にするようになりましたよね。

 ご存じと思いますが、心理的安全性をあえて説明すると、「対人関係において、リスクのある行動、例えば反論したり、疑問を投げかけたり、自分の弱みをさらけ出したりしても、不安を感じない状態・関係であること」です。

 自分の気まぐれやわがまま、不安定な気持ちをそのまま受け止めてくれそうで、まるで家族の中にいるような「安全・安心」な感じがしますよね。実際、最近は、「うちの職場はみんな仲がいい」「友達付き合いしてくれる上司がいる」と感じている方も多いでしょう。そういう方は、心理的安全性が確保された生産性の高い組織にいる可能性が高い。

 もしもそう思っているとしたら、あなたは心理的安全性を完全に誤解しています。

 「何でも言い合える関係」ということは、あなたが言えるだけでなく、反論もされるのです。耳の痛くなるようなこと、できれば聞きたくないことを指摘され、厳しいこともズバズバ言われます。

 それでも信頼関係が揺らぐことなく、お互いにダメ出しやツッコミも不安なくできる。

 そういう状態こそが、「心理的安全性が確保された」ということなのです。
 あなたの職場は、そうなっていますか?

顔色を窺わずに、間違いを指摘できる関係

 この心理的安全性が最も求められる職場といえば、宇宙飛行士が活躍する現場でしょう。宇宙空間で活動する宇宙飛行士と、彼らを支える地上スタッフのチーム。互いに命を預け、預けられる関係だからこそ、心理的安全性の確保がことのほか重要です。『宇宙兄弟』にも、登場人物たちが数々の困難をチームワークで乗り切る様子が描かれています。

 今回もコミックの名場面を通して、心理的安全性の本当の意味と、それを培うための要素を探っていきましょう。

 『宇宙兄弟』には、宇宙での活動を想定した訓練中に、「グリーンカード」が仕掛けられる場面がたびたび登場します。グリーンカードは、わざと間違いやトラブルを起こして現場に混乱を生じさせ、宇宙飛行士たちがそれにどう対処するかを観察するためのものです。

 主人公の南波六太(ムッタ)は、月ミッションに任命された先輩宇宙飛行士、ビンセント・ボールドの控えとして、地上の管制室から飛行士を支援する「キャプコム」を務めています。ミッション前の訓練中に、ビンセントがわざと間違えて、ムッタを試す場面があります。