全6835文字

 ムッタは、ジャンケン自体を楽しいと思ったわけではありませんでした。「楽しかったこの2週間を、『楽しい5人』のままで終わりたい」。だから、ジャンケンで決めたいと思ったのです。試験が終わった後も、「楽しい仲間でいたい」。そう考えるのは、「受容性」の高さゆえでしょう。

 ムッタは、ジャンケンを推す理由を、皆に説明します。

5巻 #39「グーとチョキとパー」

 ムッタの思いは仲間に届きました。全員合意のもと、A班は“運命のジャンケン”に臨むのです。

 メンバーの合意をどう引き出すのか――。

 ムッタのやり方は、誰のことも切り捨てず、嫌な思いを残さず、皆がおのずと合意できる状況を作ることでした。その根底にあったのが、メンバー同士の信頼関係と、「皆で過ごした楽しい時間を大切にしたい」という思いです。「受容性」の高い人ならではの、意思決定と言えるのではないでしょうか。

点数で決めることが正しいのか?

 A班と対照的な決め方をしたのが、溝口大和と真壁ケンジが所属するB班です。

 溝口は、強いエリート意識を持つ若者です。彼が自らリーダーに名乗りをあげ、点数制を提案しました。毎日の課題の得点をメンバーごとに集計し、その順番で決めようというのです。

 溝口が点数制にこだわるのは、「目に見える差が必要」と考えるからです。明確な基準を設け、白黒はっきりさせたがるのは、FFS理論で言うところの「弁別性」の特性です。溝口は「弁別性」の高いタイプだと考えられます。

 「弁別性」の持ち味は、合理的な思考です。
 “白黒を付けたがる”弁別性の特徴については「褒めてくれない“冷たい上司”とストレスなく付き合うには」をご覧ください。

 ただし、溝口の場合は、合理的に考えたい、というよりも、ドライな面が目立ちます。
 そして彼は、誰よりも負けず嫌いです。

 勝ちにこだわるのは、「保全性」の特性です。「保全性」の高い人は、組織への所属意識が強く、組織内での身の安泰のためには、他人よりも少しでも高い地位にいたいと思う傾向があります(第4回「『分かり合える味方』が急に敵に回る瞬間」を参照)。

 しかも、溝口はエリート街道を走ってきたので、負けることを知りません。そのため、人の気持ちに寄り添うことができないのです。「勝つことが一番」と強く信じ、「仲良しこよしを求めるのはムダ」という価値観を形成してきたのでしょう。