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何のために働くのかよく分からない……。

 あなたは、何のために働いていますか?

 管理職向けのワークショップでこの質問をすると、「子どものため」と答える人が結構います。「子どもはいずれ巣立っていきますよ」と返すと、少しためらいがちに「うーん。他に思いつきません」と答えるのです。

 皆さんはどうでしょうか?

 「自分の夢を持つことが大事」と多くの人が主張します。ビジネスの世界でもスポーツの世界でも同様です。研修の熱血講師は、「夢を持て!」と声を高らかに叫びます。

 なぜなら、「夢のある人生」は、それが目的であり、目標となり、それに向かって課題を克服していくことができる。つまり、人生を生き生きとしたものに変えていけるからです。

 もちろん、「あなたの夢は何か」と問われても、うまく答えられない人もいるかもしれません。かといって、その人が仕事に対して真剣さを欠いているとか、怠けているということではありません。

 自分の夢や志といった内面的なものは、人生経験はもちろんですが、その人の個性にも大きく影響される、と私たちは考えています。つまり、どのようにして夢や志を育んでいくのかは、個性によって違うのです。

 この連載で紹介してきた「FFS理論」が、あなたの「夢」や、「なぜ働くか」が腑に落ちる参考になるかもしれません(開発者:小林惠智博士、理論の概要についてはこちら)をお読みください。

 例えば、個性を構成する5つの因子のうち、「凝縮性」の高い人は、自分の価値観が明確なので、働く目的もしっかり持っている傾向があります。また、「拡散性」の高い人は、自分の興味のおもむくままに動くので、周りからは夢に真っすぐ突き進んでいるように見えます。

 一方、「受容性」の高い人は、周りの状況を柔軟に受け容れようとするために、“八方美人”に陥ることがあり、自分が追求したいテーマを決めきれないという側面があります。

 このタイプは人に対して寛容で肯定的であり、「人の喜びが自分の喜び」と感じることが一番の特徴です。従って、自分軸で動くよりも、相手軸で動きやすいのです。

 ですので「あなたは何のために働いていますか?」と問われた場合に、具体的な「誰か」(例えば子ども)を助けたい、と思ってはいても、大きな視点での働く目的を、自分軸で語るのは難しい、というわけです。

 何度かお伝えしたように、「受容性」は、「保全性」と並んで日本人に多い因子です。
 今回は、「受容性」の高い人の働く目的について考えてみたいと思います。

 例によって、『宇宙兄弟』(小山宙哉作、講談社)での人物描写から読み解いていきましょう。

個性によって夢の育み方が違う

 主人公の南波六太(ムッタ)は、面倒見がよく、お人よしな性格です。FFS理論に当てはめると、多くの日本人と同様に「受容性」が高いタイプと考えられます。

 ムッタは、子どもの頃から宇宙に憧れ、宇宙飛行士になるのが夢でした。大人になってJAXA(宇宙航空研究開発機構)の宇宙飛行士選抜試験に挑戦するようになり、自分と同じ夢を追いかける仲間に出会います。