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 どんなにいいアイデアを出しても、「前例がないからダメ」と却下する上司。
 リスクのありそうなことは極力避けたがる「壁になる上司」。
 どの会社にもいるものです。

 新しい取り組みは、これまでのやり方とは違うのですから、当然、いくばくかのリスクはつきものです。
 だから、「やらない」。
 すべての新規起案をことごとく潰そうとする上司を、さて、どう説得したものでしょうか。

 壁になる上司の存在は、宇宙というフロンティアに挑戦する専門機関、アメリカ航空宇宙局(NASA)も例外ではないようです。ただし、マンガの世界の話ですが……。

失敗しないコツは「何もしない」こと

 『宇宙兄弟』(小山宙哉作、講談社)は、日本人の兄弟が宇宙飛行士を目指すマンガです。主人公の南波六太(ムッタ)は、憧れだった宇宙飛行士になり、初めてのミッションに向けて訓練に励んでいました。そのとき、彼の前に立ちはだかるのが、NASAプログラムマネージャーのウォルター・ゲイツです。

 ゲイツは、宇宙飛行士のミッションへの任命権を握る重要人物です。「ミスをしない」「無理をしない」という仕事のやり方で上から認められ、今の地位に就きました。ですから、少しでもリスクがあれば、彼の答えは「No」なのです。

 この連載で紹介している「FFS理論(開発者:小林惠智博士、詳しくはこちら)」の考え方では、リスクに目が向きやすいのは、「保全性」の高い人に見られる傾向です。ゲイツも恐らく、「保全性」が高いタイプと推測できます。

 「保全性」は、これまでに何度も取り上げてきた、約6割の日本人の第一因子(5つの因子のうち、最も数値が高いもの)です。物事に対してしっかり準備して、不安な要素を取り除いてから、着実に進もうとする特性があります。

 この特性が強いと、未経験の事柄に対しては、準備し過ぎるほど準備しても不安がつきまといます。先が見えない、不確定要素が多い、難易度が高いことは極力避けて、安全な道を探りたい、そういう行動に出がちです。

 まして、過去に失敗して閑職に飛ばされた人が身近にいれば、自分もそうはなりたくないですから「石橋をたたいても渡りたくない」気分になるでしょう。

 失敗しない一番の方法は「何もしないこと」だ。そんな思い込みにとらわれ、リスクを取りたがらない上司をどのように説得するのか。これが今回のテーマです。

 「ミスをしない男」の異名を持つゲイツと、夢を実現するためにゲイツを説得したいムッタ。2人のやり取りを参考にしながら、「壁になる上司」の動かし方を探っていきましょう。