
企業がチーム作りや人材採用に「FFS理論」をどのように使い、成果につなげているのか。新人採用に、育成に、この理論を用いて成果を出しているセプテーニ。セプテーニグループの代表で、人事総務部門を統括する上野勇さん(セプテーニ・ホールディングス代表取締役グループ上席執行役員)からお聞きしています。
この新人は、どうもメンターとうまくいっていない、といった「相性」問題は、FFS理論で解決できるのか。数値を見ながら考えてみましょう。
FFS理論については連載のバックナンバー、そして『宇宙兄弟とFFS理論が教えてくれる あなたの知らないあなたの強み』を、ぜひご覧ください。
(聞き手:日経ビジネス編集部 山中浩之)
チームの人間関係を可視化する
古野:多くの企業の採用活動は、「採用して終わり」なんですよね。採用した人をどう育てるか、という議論がありません。
それは学生もうすうす気づいているんじゃないでしょうか。いや、ン十年前の自分たちの時代からしてそうでした。入社してもどうせ面倒なんて見てくれないだろうと思いながら、だったらカタログベースでスペックのマシな企業を選ぼう、となっちゃう。
上野:我々は「チームと仕事との相性がその人の成長に影響する」という考え方のもとに、人材育成を行っています(詳しくは第1回を)。
この方程式ですね。
上野:そうです。チームと仕事をまとめて「環境」と呼んでいますが、我々はできる限り本人と環境との相性を考慮して配属先を決めています。
実際に、1年後の新入社員の成長度合いが数字で明確に向上したということですが、具体的にはどうやって育てているんでしょうか。
上野:それでは、オンボーディング(新規採用者への教育プログラム)における取り組みの一部をご紹介しましょう。まずは、これを見てください。
上野:これは、新人の配属先のチームの個性分布を示したものです。FFS理論をもとにヒューマンロジック研究所さんに作っていただいています。お気づきのように、先ほど示した人材ポートフォリオで使っているパーソナリティ分類と同じです(詳しくは第2回)。攻め(拡散性が高い)か守り(保全性が高い)か、分析型(弁別性が高い)か直感型(弁別性が低い)かの2軸で、メンバーの個性の分布を表しています。
ほう。
上野:これは、新入社員本人にも見せています。「これがあなたの配属されたチームの人間関係で、赤色があなたですよ」って。
えっ。ぶっちゃけるんですか。
上野:はい。そして「あなたの場合は、Bさん(サンプル2の人)にトレーナーをやってもらうね。なぜなら、あなたのことをよく理解できるから」と。もちろん、先ほどのデジタルHRガイドラインにも定めておりますが、プライバシーの配慮として、ご自身の結果をお互いに共有しても大丈夫ですか? と事前に確認し、同意をいただいたチームに関してこのような分析結果をリポートしています。
古野:この分布図では、近くに位置する人ほど個性が似ていて、お互いに理解しやすいということを意味します。新人のうちは、個性の似た人から教わるほうが戦力化の確率が上がります。自分に合った成功法則を、同質のトレーナーが教えてくれるからですね。
上野:はい。それから、チームには自分と個性が異なる人がいることも、この分布図から分かります。個性が違えば、お互いに理解するのに時間がかかります。ただ、「この人とは強みが異なる」と最初から分かっていれば、うまく連携していくこともできます。
へえーっ。「それやってみたい」と思う人は多そうです。
上野:同じように、仕事と本人との相性も見ています。その人が強みを発揮できる働き方はこうですよ、こういう働き方をすれば戦力化の確率がこれだけ上がりますよ、というアドバイスもしています。
なんと。
古野:新しくチームに加わる新入社員だけでなく、受け入れるマネジャー側への情報提供も大事なんです。マネジャーには、いわゆる新入社員の“トリセツ”を伝えています。
「この新人はここが強みだぞ」「これはやってはいけないぞ」とか。
古野:そうそう。
これは便利だ。
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