“両方のいいとこ取り”の落とし穴

 結論を出さなければならないけれど、決められない。
 そんなリーダーがついやってしまいがちなのが、「宥和(大目に見ること)」です。

 どの意見やアイデアもすべて受け容れようとします。対立を避けて論点を明確にしないまま、あらゆる意見やアイデアが“いいとこ取り”されて、“テンコ盛り”になっていきます。

 リーダー本人は、「皆のアイデアを取り入れた、素晴らしい結論を導き出せた」と思っています。また、どのアイデアも無視されたり、否定されたりしないので、メンバーも満足かもしれません。

 ところが実際には、皆のアイデアを取り入れたことで、焦点のぼやけた丸まったモノができあがります。それで成果を出せるかというと、別の話です。見方を変えれば、これは「突っ込んだ議論を避けたために、実効性の低い結論しか導き出せなかった」という、リーダーとしての振る舞いや能力に大いに疑問符が付く状況です。

 「受容性」の高い人がガクチカで「リーダー経験」を語る際には、これと同じ状況が含まれていないか、注意せねばなりません。切り札として話したはずが、「宥和に逃げるタイプだな」と思われたら、目も当てられない。

 特に、部活やサークル、ゼミ、バイトなどある程度気心が知れたメンバー同士では、対立を嫌がって、宥和が起こりやすいのです。

 鋭い面接官は、必ずそこを突いてくるでしょう。
 「あなたがやっていたことは、ただの仲良しゲームだったのでは?」
 こう思われたら採用してもらうのはかなり厳しくなりそうです。

面接官は知りたい。「過程はどうだったのか?」

 面接では、「事実」をベースに、結果よりも過程を詳しく聞かれます。

 私も、面接官向けに研修を行う際には、必ず「事実をベースに、結果に至った過程を聞くように」とアドバイスしています。「目の前の事実をどう分析したのか。それに基づいてどう動いたのか」を面接では深掘りする。これが鉄則です。面接を受ける側は「結果」だけを気にしがちですよね。実際は「過程」、プロセスが、面接を行う側が聞きたいことなのです。

 例えば、「メンバーの意見が対立した(事実)とき、どうやってチームをまとめたのか(過程)」「問題が生じた(事実)とき、どうやって解決したのか(過程)」という具合です。面接官はエントリーシートに並んだ「リーダーを務めました」という“輝かしい戦歴”に対して、厳しい質問を投げかけるでしょう。

 それらに対して、何と答えるか。
 また、エントリーシートには、どう書くのか。

 「リーダーとしてメンバーをどう導いたか」という過程にこそ、リーダーとしての真の能力が表れるのです。結果が仮に失敗であったとしても、それを恥じたり隠したりする必要はまったくありません。「失敗という事実を認め、そこからどういう学びを引き出したか」が語れればOKなのです(失敗した事実を以て採用しないというアホな会社は、落とされたほうがラッキーです)。

 さて、そこで問題になってくるのが「受容性」が高い人のリーダーシップです。

 他人の希望をかなえたいと強く願う「受容性」が高い人は、ついつい、みんなの希望を通したくて、対立を避ける方向に結論を持って行きがちです。企業側にとっては「和をもたらすのはいいとして、情に負けて合理性を枉(ま)げてしまうのは……」と、不安を感じることになります。

 誰も傷つけたくないあまり決められない「受容性」の高い人は、どうメンバーを導けばいいのでしょうか。

 無理に決める必要はありません。相手の気持ちに寄り添えるのが「受容性」の高い人の強みですから、それを活かして、一人ひとりと丁寧に話をし、合意形成を図るやり方が向いています。

 本来、それは「受容性」の高い人の得意なことですし、組織にとってもとても貴重な能力です。絵名が大家族で頼りにされてきたシーンを見ると、スキルだけでなくそのキャラクターが、ISSのミッションで期待されているのだろうと思えます。

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 今回の記事は「就活の面接、ES対策」ですので、具体的にどのように合意形成を図るかについては触れません。拙著『宇宙兄弟とFFS理論が教えてくれる あなたを引き出す自己分析』で詳しく書きましたので、ぜひ参考にしてみてください。

 「受容性」が高い人のリーダーシップのお話は、後編に続きます(明日掲載予定)。

© Chuya Koyama/Kodansha
(構成:前田 はるみ

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