人間にはできない正確な動きで生産性を改善する産業用ロボット。ファナックや安川電機など日本勢が強さを誇る分野だ。

 だが、弱点もある。薄いガラスや食品など傷の付きやすい素材などを扱うのが難しいという点だ。例えば、自動車のライトのような複雑な形状の部品がゴロンと置かれた状態を想像してみてほしい。置かれた向きや傾きによって持つ場所が変わることになる。また、食品のような傷付きやすくやわらかい品物を扱うには、微妙な力加減のコントロールが必要になる。

 中国の軟体機器人科技(SRT)はこうした弱点を克服するために、産業用ロボットの「手」を開発している。高少龍CEOは「これまで自動化ができず、人の手作業に頼るほかなかった生産工程が自動化できる」と説明する。

 まず「ソフトグリッパー」と呼ばれる手のような形状のものをロボットのアームの先端に取り付ける。指にあたる部分は、柔らかく滑りにくい樹脂素材でできており、空気を入れるとその圧力で曲がるようになっている。ここにエアコンプレッサーで空気を入れて、「指」が開閉する角度や力を調整する。

産業用ロボットの「手」を開発する中国の軟体机器人科技(SRT)の高少龍CEO
産業用ロボットの「手」を開発する中国の軟体机器人科技(SRT)の高少龍CEO

 北京航空航天大学を卒業し、同大学のロボット研究所に所属していた高氏がこの技術に出合ったのは、2016年のことだ。最初は「手を失ってしまった人に、再び物をつかんでもらうことができる」と興奮したが、すぐにビジネスとして成立させるのは難しいと気が付いた。だが、「工場など産業用途でテストマーケティングをしたところ好評だったことから起業に踏み切った」。

 ただし、壊れやすいものを扱うことを目的とする技術だけに、微妙な制御を実現しなければならない。空気圧力とグリッパーの素材などで試行錯誤を繰り返し、2年後の18年にようやく製品化に成功した。

 飛躍のきっかけとなったのは、発売から半年後に電子機器の受託製造サービス(EMS)大手のフォックスコンが同社製品を採用してくれたことだ。高CEOは「米国にも似たようなグリッパーを作っている企業があるが、中国市場は我々の独壇場。製品開発から1年ちょっとで20業界200社に販売を拡大できた」と胸を張る。

 18年に2000万元(約3億2000万円)だった売上高は、19年には5000万~6000万元(約8億~9億6000万円)に伸びる見通し。生産現場に最後に残されているボトルネックを解消できる技術とあり、資金調達が難しくなりつつある現在の経済環境下でも投資が絶えない。

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