「教室がうるさい」「誰もノートを取らない」「教室を歩き回る」「話し合っていろいろ考えることが大事といいながら勝手におしゃべりしているだけ」……。ゆとり教育の導入を境に定着した、そんな「公教育」のイメージ。生徒同士のいじめも収まらず、それどころか、最近は神戸市の小学校で教員が教員に陰湿ないじめを繰り返していたことまで発覚した。「子供の教育のため、せめて中学からは私立に通わせたい」と思う親が増えてもおかしくない状況がある。

 だがここで問題なのは、仮に本当に公教育で十分な教育を受けにくいとしても、誰もが私学へ進めるわけではないことだ。ネックの1つとなるのが費用だ。

 日経ビジネス2019年8月12日号特集「見直せ 学歴分断社会」でも言及したが、文部科学省の16年度子供の学習費調査などによると、小中学校と大学の計16年間、すべて公立(国立)だった場合の学習費は約730万円なのに対し、すべて私立だと約2170万円かかると試算されている。

[画像のクリックで拡大表示]

 まず学校教育費(主に学費)。私立小学校の場合、年間の学費は10年で平均9万円増加。私立中学校は20年で15万円ほど増えており、年間の学費は平均でも100万円という水準にまで達していることが分かる。

 さらにここに塾代が加わる。公立小学から私立中学へ子供を進学させようとすると、塾代は総額で約86万円。ただこれは全国平均の値で、東京都内の場合、総額250万円が相場とされる。

教育への公的支出は35カ国中最下位

 こうした教育費の上昇を抑えるには公的支出を増やすのが近道ではある。だが、OECD(経済協力開発機構)によれば、小学校から大学に相当する教育機関に対する日本の公的支出のGDP(国内総生産)に占める比率は2.9%。比較可能な35カ国中、3年連続で最も低かった。

 なぜ教育に公費が回らないのか。そもそも借金大国・日本の台所事情が厳しいのは周知の事実だが、大阪大学の中澤渉教授(教育学)は2つの大きな要因があると分析する。1つは、「教育に関するお金は家計から工面して支出するのが当たり前だという感覚が他国に比べて浸透していること」。もう1つは、「教育が国にとっての優先課題であると政府や官僚、役人が認識してこなかったこと」だという。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り666文字 / 全文2452文字

【初割】月額プランが3月末まで無料

人気コラムも、特集もすべての記事が読み放題

ウェビナー【日経ビジネスLIVE】にも参加し放題

日経ビジネス最新号、11年分のバックナンバーが読み放題