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 「あれ、今日休みだっけ?」。2019年2月1日、いつものように登校してきた東京都内在住の小学6年(現中学1年)のA君は、静まり返った教室を見て戸惑った。

 あの子もこの子もいない。見回すと30数人のクラスメートのうち、登校したのは3人だけ。ここでA君は思い出した。「そうか。今日はみんなが私立中学校を受験する日だ」

 A君には、私立の中学受験の予定はなかった。それでなんらか不利益を被ったことはないが、小学校高学年になるにつれて、放課後の遊び仲間がどんどん塾に通い始めると、どことなく不安な気持ちになった。クラスの中でも受験組と公立中学進学組の間に溝が広がっていくような気がしてならなかった。

(写真:PIXTA)

 それでも「実際に受験するのはクラスの半分ぐらい」と思っていた。それだけに、都内や神奈川県の私立中学校の受験日が集中する2月1日を迎え、クラスの9割が中学受験する現実を目の当たりにして驚いた。

 やがて午前8時過ぎ、担任の先生が入ってきて、3人だけの授業が始まった。現在は地元の公立中学に通うA君だが、あの日の「仲間外れっていうか、なんか寂しい感じ」は今も心に残る。

子供が“普通”に育つためには中学受験が必須?

 「ゆとり教育」への不安などを背景に、2000年ごろから過熱したとされる中学受験ブーム。08年のリーマン・ショックによって沈静化したと伝えられたが、景気回復の追い風も手伝って、16年ごろから再び過熱化しているという。

 森上教育研究所(東京・千代田、森上展安社長)によると、私立中学受験率は足元で13%ほど。ただこれはあくまで首都圏全体の平均値で、A君が暮らすような教育熱心なエリアに限れば、受験熱は尋常でないレベルまでヒートアップしていることがうかがえる。

 なぜ都市部を中心に、子供を私学に通わせようとする親が増えているのか。それは単純明快、少なからぬ人が「公教育では、子供に一般的な人材になるための基本スキルを身に付けさせることが難しい」と考えているからにほかならない。