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香港政府は超法規的な法を発動させた(写真/的野弘路)

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 明日から週末にかかってしまうので、最新状況だけアップデートしておきたい。

 昨日公開した前回の記事でお伝えしていた通り、香港政府は10月4日、諮問会議である行政会議の特別会議を招集し、「緊急状況規例条例(緊急法)」を発動させることを決めた。香港政府は同法の効力のもとに「覆面禁止法」を10月5日0時から施行する。量刑は禁錮最大1年、または罰金最大2万5000香港ドル(およそ34万円)となる。

 多くの報道では「覆面禁止法」がクローズアップされているが、前回の記事で強調したとおり、香港社会にとって重大なのは「覆面禁止法」の公布それ自体ではなく、同法を立法会(国会に相当)の審議も経ずに即日公布することを可能にする「緊急法」の適用だ。

 発動条件は「行政会議における行政長官が、緊急状況または公共の安全に及ぼされていると認めた場合」。行政長官は「公共の利益にとって望ましいあらゆる規則を策定できる」とある。

 緊急法に明記されている具体的に政府が取りうる措置措置を以下に挙げる。その威力がよくお分かりいただけるはずだ。

a. 出版物、著作物、地図、設計図、写真、通信および通信手段の管理と抑制。
b. 逮捕、拘留、排除および国外追放。
c. 湾、港、香港水域および船舶の動きの制御。
d. 陸路、空路または水上の輸送、および運搬される人と物の管理。
e. 貿易、輸入、輸出、生産および製造。
f. 財産およびその使用の配置、管理、没収および処分。
g. あらゆる法律の修正、法律の運用の停止、修正されたことがあるかどうかに関わらずあらゆる法律の追加および応用。
h. 施設への進入と捜査の権限の付与。
k. 行政長官の名の下での、あらゆる財産と事業の所有権と支配権の取得。
n. 香港で施行されているあらゆる法律に違反した人に対する捕縛、裁判、懲罰。

 ビクトリア湾を封鎖することも、船舶を臨検することも、通信会社に全ユーザーのログや通話履歴を提出させることも、デモに資金を提供している会社や個人の財産を没収することもできる。ここにないものでも「公共の利益にとって望ましい」規則であれば新たに制定できる。政府に万能の力を与える法律であり、覆面禁止法はここから生まれた。

 この香港政府の強硬に、デモ隊はなす術もないのか。

 政府が立法会を無視して法律を制定する力を振るい始めた以上、デモ隊にとって僅かに残るよりどころは司法となるだろう。