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 前回の記事の末尾で、今回の記事からデモが大規模化した経緯を6月に遡って書いていくと予告した。だが、放ってはおけないニュースが飛び込んできたので、予定を変更してそれについて書くことをお許しいただきたい。

 まず前々回前回とお伝えしてきた、10月1日の警官による実弾発砲についての続報をお伝えする。

 10月3日、被弾した18歳の男子高校生は、入院したまま沙田(シャーティン)裁判法院(日本の地方裁判所に当たる「区域法院」)に起訴された。罪状は暴動、警察への襲撃など。保釈の是非について弁論が交わされ、4日にも結論が出るはずだ。

 同法院で暴動罪が認定されれば、最大で7年の禁錮刑が言い渡されることになる。高等法院(高等裁判所)まで上訴され、そこで暴動罪が認定されれば量刑は最大で禁錮10年となる。

 暴動罪は重い。だからこそデモ隊は、5大要求の中に「デモを暴動とした認定の取り消し」を加えている(第2回で触れた)。10月1日だけで警察は269人を逮捕した。6月以降、一連のデモで2000人以上が逮捕されている。デモが続けば今後も増えるだろう。また、デモが鎮静化し、収束してしまえば、雨傘革命の後がそうだったように、警察に記録された映像などをもとに犯人探しが始まる。「暴動認定の撤回」を勝ち取らなければ、すでに逮捕された人もまだ逮捕されていない人も含めて、デモに関わった香港人たちがみな「最大禁錮10年」というリスクにさらされることになる。だから「5大要求は1つも欠かせない」とデモ隊は主張しているのだ。暴動呼ばわりは許せない、などという情緒で掲げている要求ではない。

 だが、その要求を貫徹するために闘争が激化し、激化したためにますます暴動認定の撤回が難しくなっていくというジレンマがここにはある。それでももはやデモ隊には「退く」という選択肢がない。

 なお、ロイターは3日、香港警察が、10月1日までに武器行使に関するガイドラインを緩和していたと報じた。同社は独自に警察の文書を入手したという。第8回で書いた、実弾発砲は現場の暴走による偶発ではなく警察全体の方針転換ではないかという仮説は当たっていた可能性が高い。

覆面禁止法を即時公布するために…

 もう1つ、急ぎお伝えしなければならない動きがあった。

 3日午後、香港のいくつかのメディアが、香港政府関係筋の話として、同政府が「覆面禁止法」を成立させようとしているという動きを報じた。同法案は、文字通り、公共の場での集会などで覆面をすることを禁じるというものだ。この法律が発効すれば、デモ参加者は、道路占拠や破壊、暴行などの行為がなくても「マスクをしている」というだけで逮捕される可能性がある。