そこからおよそ2時間。その間に見聞きしたことを写真とともに点描していこう。

 路地という路地に配置された警官たちの多くのは重装備だ。へルメットにフルフェイスの防毒マスクをかぶり、透明の盾を手に、腰には銃や暴徒鎮圧用の警棒を備えている。大型の警察車両が何台も周囲に停まっており、元朗地区は200人を優に超える警官が動員、配備されていたはずだ。

軍人なのか警官なのか見分けがつきにくいほどの重装備だった(写真以下2点/的野弘路)
軍人なのか警官なのか見分けがつきにくいほどの重装備だった(写真以下2点/的野弘路)

 警察は常にビデオカメラをデモ隊に向けている。スチールカメラでデモ隊を何枚も撮影している警官もいた。カメラが近づくと、覆面のデモ参加者以外は散っていく。取材を進める中で、報道陣のものも含めてカメラを向けられることに対して恐れ、怒るデモ参加者に数多く会った。逮捕や訴追のための証拠を押さえられることを恐れているのだろう。

(写真/的野弘路)
(写真/的野弘路)

 中年女性がガスマスクを装着した警官隊に対して怒鳴りつけており、警察も怒声で応じていた。こうした光景は何度も見た。警官に食ってかかる人には、デモ参加者と思しき人も、地元住民と思しき人もいた。近くのマンションの上層階からデモ隊を応援する声をかける人もあった。

(写真/的野弘路)
(写真/的野弘路)

 だが一方で、警察を支援する市民の姿も何度か見た。そのほとんどが中高年だった。

 私の目が及ぶ限りにおいては、多くのデモ参加者の言動は挑発的ではあるが暴力的ではない。また、多くの警官の行動も威圧的ではあるが暴力的ではない。だが、ともにすべてがそうであるわけではなかった。周囲を取り囲む人々の怒声に、あるいは警官に向かって怒鳴り続ける自分に煽られるように、徐々に挑発をエスカレートしていく若者の姿もあった。また、怒りが自制心の閾値を超えた警官の姿も何度か見た。ある若者は警察車両の背後から片手に余るほどの大きさの石を投げつけていた。ある警官は、デモ隊員に殴りかかろうとして同僚の警官に羽交い絞めにされて止められていた。

(写真以下2点/的野弘路)
(写真以下2点/的野弘路)