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 前回の記事を公開して数時間後、日本時間の9月26日夜に、米国議会上下両院の外交委員会が「香港人権・民主主義法案」をそれぞれ全会一致で可決したというニュースが各紙から流れた。

 この連載では、第2回第3回と香港・元朗(ユンロン)のデモの様子を描いてきた。今回もその続きを書く予定だったが、上記のニュースを受けて、急遽、同法案可決の意味するところについて書くこととしたい。

香港返還で発効した「政策法」を強化する

 英国から中国に香港が返還された時点、つまり1997年7月1日、米国で「米国・香港政策法」という法律が発効している。この法律は、香港が中国に返還されてもなお法治主義、自由主義が守られる――つまり「一国二制度」が守られるという前提で、香港に対して通商や投資などにおいて優遇措置を認めるとしたものだ。

 現地時間25日に可決された「香港人権・民主主義法案」は、この1997年発効の「米国・香港政策法」に、より実効性を持たせ、強化することを目的としている。この法律が効力を生じると、優遇措置の前提である「一国二制度が守られている」状態かどうかを毎年検証することが米国政府に義務付けられることになる。検証の結果、一国二制度が継続されていないという結論になれば、優遇措置が見直される可能性がある。

 この法案が提出されたのは、逃亡犯条例改正反対デモが大規模化していたさなかの6月中旬。香港でのデモと政府の対立を受けて起こされたものと言っていいだろう。

 法案の中にはいくつか注目すべき文言がある。

 同法案では、まず、米国の政策として「米国・香港政策法」の文面を引きながら、その原則と目的を再確認する、としている。以下の4点を抄訳する。

A:米国は「香港の継続的な活力、繁栄、安定性に強い関心」を持っている。
B:「民主化への支持は、米国の外交政策の基本原則である」。
C:「香港の人々の人権は米国にとって非常に重要であり、香港における米国の利益に直接関連している」。
D:香港は、米国の特定の法律またはその規定の下での中華人民共和国とは異なる扱いを正当化するために、中華人民共和国から十分に自治的でなければならない。


 この「これまでの香港政策の原則」に加えて、今回の法案ではいくつかの政策原則が加えられている。特に注目すべきは以下の一文だ。

to urge the Government of the People's Republic of China to uphold its commitments to Hong Kong, including allowing the people of Hong Kong to rule Hong Kong with a high degree of autonomy and without undue interference, and ensuring that Hong Kong voters freely enjoy the right to elect the Chief Executive and all members of the Hong Kong Legislative Council by universal suffrage;


(米国政府は)中国に対して香港へのコミットメントを維持するよう要請する。これには、香港の人々が、高度な自治性とともに、過度の干渉なしで香港を統治するのを認めること、香港の有権者が、普遍的な参政権によって、行政長官と香港立法会のすべての議員を自由に選ぶ権利の享受を認めることが含まれる。


 この法案では「民主化への支持は、米国の外交政策の基本原則である」と述べるにとどまっていたところから一歩踏み込んで、中国政府に対して「universal suffrage(普遍的な参政権)」によって行政長官と立法会議員を「freely enjoy the right to elect(自由に選ぶ権利を享受する)」というところまで中国政府に求めていくと明言している。

 ここに書かれているのは、デモ参加者たちが5大要求の1つとして求めている「普通選挙の実現」そのものと言っていいだろう。