全2264文字

 日銀の異次元緩和であふれた投資マネーはあらゆる金融商品の価格を押し上げている。端的なのが不動産市場だ。東京などの大都市やリゾート地では物件の利回りが低下(価格は上昇)。調達金利の低さもあいまって、大規模オフィスビルの期待利回りは3%台まで低下している。

 日経ビジネスは9月2日号の特集「不動産 まだ上がるか」で、活況に沸く不動産市場の実情をリポートした。東京と家賃が変わらない離島、中国人が買い占める老舗商店街、暴力団が立ち退いた元遊郭跡地——など、離島のリゾート地から大都市の過小評価されていた地域まで様々なところにマネーが流れ込む現状や今後の動向をまとめた。

 この特集では、1章を割いて不動産を買う会社員、いわゆる“サラリーマン大家”の素顔を描いている。


リーマンショックから10年余り。日本では再び不動産が過熱している

 不動産マネーの中にはファンドや企業、富裕層だけでなく、会社員など個人の資金も含まれる。「老後資金2000万円」問題が象徴しているように、老後のための資産形成は待ったなし。その中で、安定的な収入を見込める商品として不動産に目をつける人は少なくない。過去数年、地銀が会社員の不動産投資に積極的だったこともあり、1棟ものの投資用マンションに投資するなど、不動産投資にアクセルを踏む会社員が増加した。

 もちろん、風向きは変わっている。シェアハウスのサブリース事業が破綻、オーナーへの賃料が未払いになった「かぼちゃの馬車」事件とスルガ銀行による不正融資が明るみに出たことで、会社員向けの過度な信用供与が問題視された。金融庁の指導によって地銀や信金信組の融資姿勢も転換している。

 それでも、どこ吹く風とばかりに買い進める人々は少なくない。今回は、そんなすご腕のサラリーマン投資家の投資手法を見ていく。まずは、現役銀行員の河津桜生氏(仮名)だ。

 若者に抜群の人気を誇る東京・三軒茶屋。8月中旬のある日、茶沢通り沿いのカフェに行くと、約束の男性は既に店の前で待っていた。河津桜生氏。大手金融機関の融資担当という顔を持つサラリーマン大家だ。このカフェは、河津氏がつい最近までオーナーだったという。