観光客のマナーの問題もあります。ゴミもそうですが、コケを踏まれたり……。

カー:それも観光客が悪いのではなく、受け入れる側の問題だと思います。例えば、タイのある観光地では中国人観光客の態度が悪く、「中国人お断り」という看板を出す店まで出ました。ただ、そのままではまずいということで、その後は観光バスを降りる前に1~2分、タイの行儀作法についてレクチャーするという取り組みを始めたんです。効果はてきめんで、中国人観光客のマナーは大きく向上しました。

知らなかっただけなんですね。

カー:そう、知らなかっただけ。つまり、受け入れる側が教育する必要があるんですよ。

 実現可能かどうかは分かりませんが、京都もバスの中や改札口のところで京都観光の作法を教える。それを聞いて理解した観光客だけが、神社仏閣などの観光名所に入れる、というような仕組みを導入してはどうでしょうか。

京町家、問題は買った後に簡単に壊してしまうこと

スマートフォンのアプリを作り、レクチャーの受講記録を残せばよさそうですね。それぞれの名所に端末を置けば、観光客の管理にも役立つかもしれません。

カー:私は乱立する看板の問題も景観破壊の元凶だと思っているんです。「撮影禁止」「土足禁止」といった看板が数カ国語で立っていて、景観を破壊している。こういう基本的なマナーも教えれば、余計な看板を減らすことができる。

インタビューの場となった正覚寺の庭に控えめに掲げられている看板。カー氏は観光地に乱立する看板についても問題視している
インタビューの場となった正覚寺の庭に控えめに掲げられている看板。カー氏は観光地に乱立する看板についても問題視している

不動産投資についてはいかがでしょう。中国人をはじめとした外国人が京町家を買いあさっているとよく報道されます。

カー:冒頭にも申し上げましたが、買うのは問題ないんですよ。問題なのは買った後に簡単に壊してしまうこと。それの対策には用途制限や景観維持の規制を導入すればいい。それに、外国人ばかりが悪者になるけど、京都の不動産を買っている大半は日本人だと思いますよ。誰が投資したかは関係なく、町並みや文化を維持するという観点で町をマネジメントすることが重要です。

京都と日本の将来についてはどう見ていますか。

カー:私はいささか悲観的です。何度も話していますが、日本は数の議論ばかりで、文化を大事にしよう、景観を大事にしようという思い自体が希薄なんですよ。町の中、お寺の中、境内の中の本来の文化的な意味を観光客にどういうふうに経験してもらうかという意識が薄い。

 インバウンドの増加は京都にとっても日本にとっても極めて重要です。増える観光客をどのように受け入れて、どう回遊させるか。その中で、写真を撮るだけでなくどのように京都という文化を経験してもらう場をつくるか。そこをきちんと研究していかないとダメです。この思いが強ければ、今の倍の観光客が来たってうまくいくと思います。