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“異次元”とも形容された日銀の金融緩和とインバウンドブームが相まって、一部の都市の不動産価格は上昇の一途をたどっている。外国人観光客の増加に沸く大阪もそんな活況を呈するエリアの1つ。とりわけ労働者の町として知られる西成は外国人観光客の増加で注目を集めている場所だ。

日経ビジネスでは、9月2日号(予定)で過熱する不動産市場を分析した特集記事を掲載する。低い調達金利と、他の金融商品に比べて相対的に高い利回りを背景に、一般のビジネスパーソンから日本の不動産を割安と見る外国人投資家まで様々なマネーが国内の不動産に流れ込む。その中では、西成のようにこれまで過小評価されていたような不動産も動き始めた。

今の状況をバブルと見るか、グローバル水準に適正化していく過程と見るかは意見が分かれるかもしれない。その結論を出す前に、全国各地で起きている現象を見てみよう。

 大阪市西成区――。地下鉄御堂筋線・動物園前駅を駆け上がると、キリンや象のオブジェが飾られたアーケード街にたどり着く。通天閣やジャンジャン横丁のある新世界の南隣に位置する動物園前一番街である(正式名称は飛田本通商店街)。

 今から100年ほど前、にぎわいを見せる飛田遊郭に隣接したこともあり、自然発生的に商店が集まったといわれている。動物園前駅から旧飛田遊郭大門跡まで、およそ500メートルにわたって50軒以上の商店が軒を連ねる。

西成にある動物園前一番街。昼間は労働者然とした高齢者が行き来している

真っ昼間から大音量のカラオケが通りに響く

 この歴史ある商店街に“異変”が起きている。カラオケ居酒屋に転換する店舗が急速に増えているのだ。飛田本通商店街振興組合の村井康夫理事長によれば、一番街では既に11店がカラオケ居酒屋だという。

 商店街をぶらりとしながらカラオケ居酒屋をのぞけば、店を切り盛りしているのは片言の日本語を話す中国人女性。メニューは基本的に中華料理で、客は1曲100円のカラオケを熱唱している。

 もともとは隣接する「あいりん地区(通称・釜ヶ崎)」に集まる日雇い労働者らを主に対象としたビジネスだったが、歌って飲んでも2000円程度という値ごろ感もあり、最近は新世界や天王寺界隈から流れるサラリーマンなどの2次会需要でにぎわっている。

動物園前商店街のカラオケ居酒屋

 真っ昼間から大音量のカラオケが通りに響く様子は、この商店街ならではの情景と言える。