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デジタル経済の覇者となった「GAFA」。国を超える規模や影響力を持ち、富の源泉となる様々なデータを独占的に手中に収めてきたその支配構造が崩れようとしている。世界中で民衆の反発が広がり、競争の公平性や徴税などの面で政府による監視の目も強まっている。日経ビジネス1月6日号特集「終焉 GAFAの時代」では、世界で広がるGAFAの覇権への反発と、その先にある国家や企業の未来を展望した。個人がデータの主権を握る「GAFA後の時代」に何が待ち受けているのか。来るべき社会を示唆する実験が始まった。

 東京都杉並区の会社員、斎藤敬悟氏(仮名)の自宅アパートを訪ねたのは2019年12月初旬だ。斎藤氏が一人で暮らすワンルームでは、1週間前に取り付けられたビデオカメラが3台回っていた。死角はトイレと風呂場だけ。自宅でくつろいでいる時や寝ている時まで、すべてが撮られる。録画は19年12月下旬までの1カ月間だ。

ITスタートアップ企業のプラズマ(東京・目黒)が実施した実験に参加した斎藤敬悟氏(仮名)の自宅。行動を記録するために室内には3台のカメラが取り付けられている

 斎藤氏は、個人情報の収集をどこまで社会が受容するかを調査するための実験の参加者の1人だ。報酬は20万円。「便利なサービスを享受するためなら、企業に個人情報を提供することに抵抗感はない」と語る。ただし前提条件がある。「集めた個人情報を収益に換えていることを企業が消費者に対して十分に説明すること。そのうえで個人情報の提供に同意するかどうか選択する機会を消費者にきっちり与えなければならない。残念ながらGAFAはそのどちらもできていない」と言う。

 実験を主催するのはITスタートアップ企業のプラズマ(東京・目黒)。同社の遠野宏季代表取締役は、GAFAへのアンチテーゼとして企画したという。「GAFAは便利なサービスを無料で提供する代わりに、個人情報を集めてカネに換えている。そのビジネスモデルに気づいた利用者が不信感を抱いている」と話す。

 もちろんGAFAなど巨大テック企業は、個人情報を自分たちのビジネスに利用することを規約に明記している。しかし、ユーザーの全員が規約を読み込んでいるわけではない。