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 検索サービス「ヤフー」を展開するZホールディングスと、対話アプリのLINEが経営統合に向けた交渉を進めている。両社の背中を押した要因の一つが、スマートフォンを使った決済市場での競争激化。顧客囲い込みに向けた費用がかさみ、各社とも体力勝負の様相を呈している。実際のところ、スマホ決済を含めたキャッシュレス決済の利用状況はどうなっているのか。「日経ビジネス」と「日経クロストレンド」は共同で、キャッシュレス決済の利用状況などを探る1万人調査を実施した(調査結果は日経ビジネス11月18日号特集「誰が得する〇〇ペイ キャッシュレスの闇」でご覧になれます)。

 躍進ぶりが目立ったのが、ソフトバンクとヤフーが立ち上げた「PayPay(ペイペイ)」だ。1年前と比べると認知率は57.3%から98.9%に、利用率は2.8%から37.2%に上昇した。同じQRコードを用いた決済サービスの「LINE Pay」や「楽天ペイ」を一気に抜き去り、存在感を高めている。PayPayをけん引する中山一郎社長執行役員CEO(最高経営責任者)にデジタル化で変革期を迎えている決済の未来図を聞いた。(編集部注:インタビューは11月7日に行いました)

中山一郎(なかやま・いちろう)氏
1969年生まれ、愛知県出身。94年国際デジタル通信(現IDCフロンティア)入社、13年に社長就任。16年ヤフーに入社、18年にPayPay社長執行役員CEOに就いた。(写真:陶山勉、以下同じ)

2018年10月にPayPayがスタートして1年が過ぎました。「日経ビジネス」と「日経クロストレンド」が実施した調査では、PayPayの認知率が98.9%、利用率は37.2%となり、同じQRコードを用いた決済サービスの「LINE Pay」や「楽天ペイ」を一気に抜き去りました。手応えはいかがでしょうか。

中山一郎・PayPay社長(以下、中山氏):想定を上回るスピードで広がったのは、ひとえにユーザーとストア(加盟店)の皆さんのおかげです。また、国が熱心に推進しているのも大きい。キャッシュレスが進んでいる国は、国が何かしらの政策を打っています。今回のポイント還元制度に関しても、開始1カ月前の9月ごろから普及が加速したと感じます。ただ、認知率が98.9%。100%まで1.1%足りない。これを埋めるために何ができるかという思いが強いですね。

スマートフォン決済アプリとしては後発でありながら、利用率首位となった原動力はどこにあるのでしょうか。

中山氏:キャッシュレス全体が盛り上がる中で、PayPayはPayPayにしかできないことをしてきました。

 1つはマーケティング。後発だったので、知ってもらうために2018年12月に(100億円かけた)キャンペーンを行った。その後、2~5月に100億円キャンペーンを再び行い、ユーザーに利用を促せた。それに伴って、ストアの加盟も増え、それが今も続いていると思っています。

 SNSやツイッターで「これは手放せないよね」「スマホ1台で外に出かけられて便利だよね」という意見を見ると、本当にありがたい。今後、使い続けてもらうには、利便性の追求は大切だなと思います。

 第2に営業力。全国20カ所に営業拠点を設け、数千人の従業員が加盟店を開拓する活動も、PayPayにしかできなかった。そして今でもPayPayしかやっていない営業活動です。

 3番目は開発力。18年10月にサービスを開始してから、アプリの使いやすさの改善を進め、既に70回ほどアップデートしています。週1回を超えるペースです。来年の今ごろには、今の使い心地、アプリの画面を忘れてしまうくらい進歩したいと思っています。

 アプリの表示画面だけでなく、目に見えない裏側も改善してきました。例えば、PayPayに入金するための銀行口座の登録なら、以前は銀行のウェブ画面にたどり着くまで20超のステップがあり、15~20分かかっていました。今はそれを6ステップ程度にし、1~2分に短縮しました。

 こうしたスピード感で提供される決済サービスは、日本で今までなかったのではないでしょうか。社員みんなでPayPayを使って意見を出し合い、また、ソーシャルの(SNSなどに書き込まれた)意見も参考にしながら、アプリの文言や、操作順序を変えてきました。(技術面や営業ノウハウで提携しているインドのスマートフォン決済大手の)「Paytm(ペイティーエム)」の協力を得ながら、アプリをPayPay社内で改善できているのが、スピード感につながっています。