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 日本が強みとしてきた現場力の低下を指摘する声は多い。だが、日本に精通する米ハーバード大学のジェームス・ロブソン教授は日本古来の強さにこそ、現場力復権のカギがあるとみる。同教授が着目するのは「モノには魂が宿る」という考え方。いったい、どういうことか。

 10月21日号の日経ビジネス特集「さびつく現場力 磨けば光る『日本流』」では、苦闘する日本の現場を歩きながら、現場力復権の条件を探っている。

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1965年生まれ。87年カリフォルニア大学サンタバーバラ校(宗教学)卒。中国や日本、台湾で研究活動をした後、2002年スタンフォード大学から仏教学の博士号を取得。ミシガン大学などで教えた後、08年にハーバード大、12年から同大教授。

ロブソン教授は、日本人の精神は神道や仏教、禅の影響を受けていると指摘されていますね。

 日本人には非常に長い年月をかけて築き上げてきた文化的な「価値観」があります。

 例えば、私は毎夏、京都に行きますが、そこで針供養を見るたびに感銘を受けています。「モノ」は米国では簡単に捨ててもいいモノですが、日本人にとっては単なるモノではなく、精神(スピリット)が宿っているモノなのです。モノには魂が宿っている、という考え方ですね。

モノには魂が宿っているという考え方は、世界的に見て珍しいのでしょうか。

 確かに「モノには魂が宿る」という表現は日本的ですね。ただ、世界を見渡してみると、アフリカや欧州など、無機質なモノに何らかのパワーが宿っていると考える地域はあります。現在はその風習が薄れていますが、欧州やアメリカ(大陸)でも、石や彫刻などにパワーが宿ると考えられてきました。

 でも、日々の生活に使っているモノにまで魂が宿るという考え方は日本特有だと思います。

 日本では神道や仏教の建築、道具などが非常に精巧な技術を用いて作られてきました。茶道で使う茶器、芸者さんが使うくしなど、文化的な道具や生活の必需品にも精巧な技術が使われていて、そうしたモノづくりが日本の製造業の原点にもなっています。

 日本人はすべてのモノ(道具)をいたわり、特別な注意を払って扱います。庭師の道具でも、包丁でも、何でも。道具をいたわる人が大切に作っているモノなので、日本の製品は今も世界中から尊敬されています。高い「技術」が使われているだけでなく、作る人が自分の仕事に誇りを持ち、そのプライドをかけて特別な注意を払って作っているからです。