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若いときに成果を出した後はどうなるのでしょうか。中高年の処遇については、どう考えますか。

西原氏:もちろん、研究者として成果を出して年齢を重ねた40代以降の人材も重要です。特にマネジメントには、若い頃に結果を残したという経験が必要です。技術領域をしっかりと理解した上で、成果や研究内容を“目利き”することはベテランだからこそ可能です。「自分はもう馬には乗らないが、いい馬かどうかは目利きできる」といった能力が年齢を重ねた研究員には求められるのです。

 また、若い時期に優れた成果を残した研究者は、“先駆者”として次の世代の優秀な人材を引き寄せる存在でもあります。企業における技術の強みとは、すなわち人のつながりの蓄積です。優れたチームには必ず先駆者がいます。今はNECを離れた人材からも「人間のつながりこそがNECの強みだ」という話をよく聞きます。若手からベテランまで、優秀な人材が永続的にNECで研究をしたいと思える給与システムをつくりました。

 もちろん、給与制度を整えても独立志向の強い人材はいるでしょう。大企業の役割とは、独立志向が強い人材も含め、優秀な人材を輩出することにあると考えています。NEC史上最年少の主席研究員となった機械学習の世界的なエンジニア、藤巻遼平さんは、2018年にNECの研究所から独立して、シリコンバレーで新会社ドットデータ(dotData)を立ち上げました。NECは追い出すことはせず、むしろ彼をサポートしました。独立を志向する人材と敵対するのではなく連携することが重要だと考えています。

 「NECに入社すれば、チャレンジする場も、待遇も与えてくれる」――。そんなイメージを持ってくれるようになれば人材は自然と集まるでしょう。こういった研究者のエコシステムを構築することも、賃金制度を改定した目的の一つです。

 個人的な見解ですが、これからの雇用形態では年齢、性別、国籍といったあらゆる面での“障壁”がなくなっていくでしょう。「新卒一律」といった発想も徐々になくなり、新人採用でもバリエーションが増えていくと思います。

 最近、優秀な大学生がスタートアップを志してチャレンジしていることは素晴らしいと思います。会社に属さずに、フリーランスで複数の仕事をこなしていく人材も増えていくでしょう。

 「社会的なインパクトを与える仕事をしたい」と、研究とビジネスを両立させようとする中堅の人材が大企業から飛び出していくケースも増えています。こういった動きにより人材の流動性が高まれば、給与制度にもダイナミックな変化や多様性が生まれていくでしょう。

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