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10月7日号特集「目覚めるニッポン 再成長へ50人の提言」に登場した孫正義ソフトバンクグループ会長兼社長インタビューの全文公開の3回目。孫会長はAI革命の群戦略の前に、インターネット革命の勃興期にもネット群戦略を構想していたという。ただ、ネットバブルがはじけ資金が足りない中、ブロードバンド事業でNTTに戦いを挑むことに。その時投資する機会を逃した企業は、米アマゾン・ドット・コムや米フェイスブック、米グーグル、米イーベイ、中国の百度(バイドゥ)だったと明かした。今回は過去の後悔と現在の原動力について語った。

孫正義氏インタビュー全文
(1)「今の実績では恥ずかしい。焦っている」
(2)「ビジョンファンド、夢はヒーローたちの指揮者」
(3)「我々は投資会社ではなく、情報革命屋さん」

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(写真:村田 和聡)

日本は失敗を恐れすぎる部分が強いように感じます。孫さんがこれまでで一番失敗したと思うのは何ですか?

孫正義ソフトバンクグループ会長兼社長(以下、孫氏):一番苦しい戦いだったのは「ヤフーBB」でブロードバンド事業を始めたときです。年間1000億円の赤字を4年間出しましたから。ネットバブルがはじけ、ソフトバンクの時価総額は20兆円から2000億円に下落しました。一番苦しいときに、NTTという当時の日本で一番大きな相手に競争を挑んだわけです。孫子の兵法の「勝ちやすきに勝つ」、負け戦はしないという鉄則から踏み外していますから。

今だから話せますが、当時、証券業界ではソフトバンクは潰れるのではないかという話が出ていました。

孫氏:いや、僕自身もそう思った。噂じゃなくて(笑)。

 その前のネットバブル期には、お金に対してむなしいと思った時期もありました。この俺は努力しているわけでも能力があるわけでもないのに個人資産が1週間で1兆円ずつ増えていく。一瞬ではありましたがビル・ゲイツ氏(米マイクロソフト創業者)を抜いて世界一になったこともありました。

 そのとき、知り合いが急に増えたんです。目の合った人は全員知り合いみたいな感じで、満面の笑みで寄ってくる。僕に対してなのか、僕の資産に対してなのか。人間不信のような、お金への嫌悪感を抱き、事業のことよりも寄付のことばかり考えるようになりました。

 これは何かおかしいなと思っていたのですが、ネットバブルがはじけてどん底に落ちたときに、逆にむなしさが吹っ飛んでたぎるような闘争心に一発で火がつきました。一番難しいNTTを勝負の相手に選び、極端に言えば自爆しても構わないというくらいの覚悟が生まれました。

 ただ最大の危機であると同時に、あらゆる闘争本能に火がつき、生きているという実感を取り戻した時期でもありました。そのことを思うと、今は小さな危機がちょこちょこと起きていますが、遊んでいる程度のことです。