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世界で日本企業の存在感が低下している。その中で今、世界で最も著名な日本の経営者と言えば、ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長だろう。世界の経済メディアの記事に毎週のように名前が載っている。

グローバルビジネスの最前線で戦い続ける孫氏は今、日本の経済やビジネスの現状をどのように見ているのか。自身の後悔や野望に重ねて、縦横無尽に語ってもらった。当初は1時間の予定だったインタビューは熱を帯び、1時間半に及んだ。10月7日号特集「目覚めるニッポン 再成長へ 50人の提言」に入りきらなかった全文を5回にわたり、公開する。

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孫さんはたくさんの海外の会社を見ています。日本の現状をどう見ていますか。

孫正義氏(ソフトバンクグループ会長兼社長、以下、孫氏):非常にまずい。一番の問題は、戦前戦後や幕末に比べて起業家精神が非常に薄れてしまっています。「小さくても美しい国であればいい」と言いだしたら、もう事業は終わり。縮小均衡というのは、縮小しかありません。日本の中だけで、鎖国された江戸時代のような状況で完結できるならまだいいんですけど。

ソフトバンクグループ会長兼社長。1957年8月、佐賀県鳥栖市生まれ。62歳。81年、日本ソフトバンク設立。96年ヤフー社長、2006年ボーダフォン日本法人(現ソフトバンク)社長、13年米スプリント会長に就任。17年、ソフトバンク・ビジョン・ファンドを設立し、世界のAI関連企業に投資する。同年から現職。
(写真:村田 和聡)

 一方、世界は急激に動いています。米国は依然として技術革新は進んでいますし、中国は巨大化し、東南アジアも急拡大してきている。それなのに、若いビジネスマンは国外に打って出るんだという意識が非常に薄れてしまっています。留学生もひところに比べて急激に減っていますよね。日本のビジネスマンがもう草食系になってしまった。それでは活力になりません。僕は、教育や思想的なものが非常に問題だろうと思います。

 それから1980年代、90年代ぐらいまでは、日本は電子立国と言われ技術で世界を引っ張る力がありました。その勢いは全くなくなって、技術的な面で日本が世界のトップを取っている分野はどんどん減ってしまいました。今や部品や自動車が一部残っているくらいです。今は完全に影が薄れて、技術の日本というのがもう消えてなくなってしまったという感じです。

 そういう状況下で、中国は欧米、日本のまねをして、安ければいいだろうというふうに言われていましたが、今や技術の面でもかなり世界のトップを争うところに来て、はるかに日本を抜いていってしまっている。これは日本が競争力を失ってしまったという意味で、非常に問題だろうと思います。半導体も日本は一時トップでしたけれども、もう今や完全にそのポジションを失ってしまった。そういう意味では日本経済は、特にこの30年間ほぼ成長ゼロで、非常にまずい状況だろうと思います。小さな村の小さな平和はいいんですけど、それでは世界から置いてけぼりになってしまう。いつの間にかもう完全に忘れ去られてしまう島国になってしまうような気がします。