全1981文字
イオンは国内企業で最大の7万5000人以上の認知症サポーターを育成している

 塚田氏は当時できたばかりの認知症サポーターの講座を自身が受けてみた。認知症と診断されても普段から外出する人が多かったり、見た目だけでは判断できなかったりと、「認知症について全く分かっていなかった」(塚田氏)ことに気づいたという。

 家に帰れなくなってしまったり、その場で商品を開けて食べてしまったり、ずっと同じ場所に立ち続けていたり。不特定多数の顧客に対応する小売業には特有のトラブルがある。それを踏まえたサポーター養成講座では、困った行動に対する個々の正しい対応を暗記するのではなく、ある状況で認知症の人はどう感じているかという原則を学ぶ。

 認知症の人は「起きたことは忘れるが、その時の感情は覚えている」という傾向がある。売り場で商品を食べてしまった高齢者に対して、店員が怒鳴ったり引っ張ったりしたら、食べたことは忘れてしまい、「嫌な思いをした」という感情だけが残る。それを知ったうえで、それぞれ行動が異なる目の前の顧客にどう対応するのが望ましいのかを考える。

 講座を受けた従業員からは「今まで正しい知識がないまま変な対応をしていたことが悔やまれる」「普段の接客を見直すきっかけになった」といった感想が上がる。塚田氏は「もしかしたら認知症だからこんな行動をしているのかもしれないという可能性を頭に入れ、想像力を働かせることが、いい接客につながる」と話す。

 イオンは高齢者が買い物をできるだけ長く続けられるようにし、家族も安心するような安全な空間を提供したいという。認知症を知り、サポートできる従業員をその要と位置付けている。CSR(企業の社会的責任)の観点からの取り組みだが、地域の課題で頼られる存在になれば、ビジネスにもプラスに働くはずだ。