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 多くの企業にとって、高齢者の認知機能が下がることへの対応は喫緊の課題になりつつある。中でも早くから危機感を強めていたのが、毎日多くの高齢者を迎えるGMS(総合スーパー)だ。日経ビジネス9月23日号の特集「判断力低下社会」では、認知症の人を支援する知識を持つ「認知症サポーター」を大規模に育成しているイオンやイトーヨーカ堂の取り組みを紹介している。

イトーヨーカ堂は店舗で来店客も参加できる認知症サポーター講座を開いている

 都内のあるイトーヨーカ堂の店舗で3年ほど前、毎日来ては会計をせずに商品を持って帰ってしまう高齢女性がいた。当初は万引きを疑い、警察に相談したという。その場は収まったが、後日にまた来店して、会計をせずに帰ってしまう行動が続いた。

 「もしかしたら認知症かもしれない」。従業員が気づき、地域の包括支援センターに連絡。女性は一人暮らしで、認知機能の低下が疑われるにもかかわらず、介護保険の申請ができていないことが判明した。包括センターが介在したことにより、その後は介護保険を使ってヘルパーと一緒に来店するようになった。

 対応したのは認知症の基礎知識や特有の行動を学ぶ「認知症サポーター」と呼ばれる民間資格を持った従業員だ。小田急電鉄で沿線の駅員のうち870人が取得するなど公共交通機関でも広がっているが、GMSの取り組みは先行しており、規模が大きい。イトーヨーカ堂は2015年から資格取得のため社内研修を実施している。資格を持つ従業員は19年9月時点で8500人を超えている。

 サポーターを増やすと同時に、店舗は地域の自治体と関係を強めてきた。高齢者の支援拠点である地域包括支援センターとのつながりができたことで、家に帰る道が分からなくなってしまった高齢者への対応など、「以前なら警察に通報していたケース」(強矢健太郎イトーヨーカ堂経営企画室マネジャー)で協力し、円滑に家族に引き渡すような対応につなげている。

 イトーヨーカ堂にとってサポーター養成は、「人材つなぎ留めのツールにもなっている」(強矢氏)という。パート従業員は40代以上が多く、介護が身近な問題だ。家族に認知症の人がいない場合でも、研修を通じて近い将来どんなことが自分の周囲に起こり得るのかが分かり、すでに介護している同僚への理解が深まる。「親の介護にも役立つ話だった」という感想が寄せられる養成講座は「研修としては珍しく人気がある」(強矢氏)という。

「安全な店」が競争力に

 認知症サポーターの養成で先行しているのがライバルのイオンだ。07年から店舗で認知症対策に乗り出し、国内企業最大の7万5000人以上のサポーターを養成済み。サポーター養成講座の講師資格を持つ社員も900人いる。

 「これから認知症のお客様と接する場面が増えるのは間違いない」。07年当時、イオンの顧客対応の部署に所属していた塚田公香氏は各地の店舗から「認知症のようなお客様がいる」という相談を受けていた。自身が顧客の問い合わせの電話に直接応対した際も、何度もかけてきて同じ内容を繰り返し話す人がいる。認知症の顧客が増えていると実感していた。