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日経ビジネス9月16日号の「物流革命 フィジカルインターネット」では、スタートアップ企業を巻き込んで、物流業界に変革の波が押し寄せていることを紹介している。未上場ながら企業価値が10億ドルを上回る「ユニコーン」もまた、そのけん引役。米調査会社によると、世界では物流業界には6社のユニコーンがあるという。

 米調査会社のCBインサイツによると、2019年5月時点で企業価値が10億ドルを上回るユニコーン企業は世界で約350社ある。この中には、物流サービスにかかわる企業も6社ある。残念ながら、日本企業の名前はリストにはない。6社のうち4社が中国企業で、残りは米国とインドから1社ずつ

主な物流業界のユニコーン
会社名 評価額 主な出資者
インド Delhivery(デリバリー) 20億ドル ソフトバンクグループなど
米国 KeepTruckin(キープトラッキン) 10億ドル GV(旧グーグル・ベンチャーズ)など
中国 Manbang Group(マンバン・グループ) 60億ドル ソフトバンクグループなど
中国 Shansong Express (閃送) 10億ドル JD キャピタル・マネジメントなど
中国 New Dada(ニューダダ) 10億ドル ウォルマートなど
中国 YH Global(YHグローバル) 10億ドル グランドランドグループなど
出所:CBインサイツ

 6社の中で一番、評価額が高いのが、中国のマンバン・グループ。その額は60億ドル(約6300億円)に達する。出資先にはソフトバンクグループなどの「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」も名を連ねている。

 同社が手掛けるのは、トラックドライバーと荷主をマッチングさせるサービスだ。自家用車のドライバーと、移動したい人を結び付ける米ウーバーテクノロジーズの配車アプリの貨物版といえる。

 広大な国土を抱える中国では、急拡大を続けるネット通販市場を支える物流インフラの整備が大きな課題になっていることは、「中国でリアル店舗を急拡大、物流変えるアリババの野望」でも述べた通り。日々、増え続ける貨物量をどうさばくか。そこにIT(情報技術)やAI(人工知能)のテクノロジーを持ち込み、効率化を目指したのが、マンバンのビジネスモデルの原点だ。

19年5月、ビッグデータとトラックや貨物列車を結び付けることで、物流効率を上げる、と説明するマンバン・グループの担当者(写真:ユニフォトプレス)

 中国メディアによれば、今年3月時点で、マンバンのサービスを使っているドライバーはのべ3200万人を超えたという。無人運転の技術を持つ企業も買収し、自動運転トラックを使った輸送実験にも取り組んでいる。そうした革新的な取り組みを支えるのが、ファンドなどから調達した資金というわけだ。

 もっとも、特集「物流革命 フィジカルインターネット」で取り上げたCBクラウド(東京・千代田)のように、日本でもデジタル技術を駆使して物流効率を上げる新たなサービスを立ち上げるスタートアップは出てきている。通信の世界で革新を呼び込んだインターネットと同じ発想で、リアルな世界にも効率化を促すフィジカルインターネットの芽は確かに日本にもある。

 海外との違いがあるとすれば、そのアイデアを大きな果実にするだけの資金力なのかもしれない。物流業界に限らず、日本ではなかなかユニコーンが育たない。リスクマネーの流通が乏しいという構造的な問題が背景にあるにせよ、いかにこうした新しいアイデアを社会基盤として実装するか、その手腕が問われている。

 フィジカルインターネットを巡っては、国土交通省や経済産業省、ヤマトホールディングスなどが「スマート物流サービス」としてプロジェクトを始めている。各社の荷物のデータをつなげ、トラックの積載効率を上げるための最適な仕組みを探るという。ただ、この結果が出るのは2023年ごろとみられ、あくまでも実証実験。予算は5年間で100億円にも満たない。

 そうしている間にも、米国のアマゾン・ドット・コムや中国のアリババ集団など、物流に商機を見いだした巨大企業が資金力を武器に、新たな手を打ってくる。マンバンのようなスタートアップも、実績を積み上げながら、投資家から成長資金を獲得し、次なるビジネスにつなげていく。そうした競争の中で、果たして日本は世界に存在感を示せるようになるだろうか。