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日経ビジネス9月16日号特集「物流革命 フィジカルインターネット」では、デジタル技術に強みのあるスタートアップなどが続々と物流分野に進出していることを紹介した。一方で、これまでこうした企業の物流サービスを利用する側だったネット通販事業者も自ら物流を手掛け始めている。楽天も今年8月、物流分野に2000億円を投資すると発表した。どんな戦略を描いているのか。

 「配送日が分からない」「配送料金が不明瞭」──。楽天のネット通販サイト「楽天市場」の利用者がこんな不満を漏らす。ヤフーが衣料品通販サイト「ゾゾタウン」を運営するZOZOの買収で合意するなど、競争が激しくなるネット通販市場。こうした利用者の不満を放置していれば、客離れが進みかねない。

 楽天市場は、食品メーカーや化粧品メーカーなどが仮想店舗を出店する形を取る。商品の配送についても、出店者が手配するため、配送日や配送料金も出店者ごとに異なるのが一般的。利用者にとっては分かりにくく、これが不満につながっていた。

 このままでは、配送管理までを手掛けるライバルのアマゾンジャパン(東京・目黒)との差がさらにつきかねない。

 楽天の三木谷浩史会長兼社長が決意した。8月、横浜市内で開いた同社のイベントでこう宣言したのだ。「物流分野に2000億円を投じる」。自ら配送を管理することで、配送料金の透明性を高め、利用者の不満解消を急ぐという。

楽天は物流分野に力を入れる

 ただ、やみくもに倉庫やトラックを確保するのではない。こうしたハード面への投資もするが、むしろ楽天は、自社の強みを生かした新しい物流のカタチを探ることに力を入れる。

 同社で物流事業を統括する小森紀昭執行役員が言う。「商品のサイズなどのデータ、顧客の購買データなど、楽天には、これまで蓄積してきたデータがある」。データを上手に活用することで、効率的な物流網を築こうというわけだ。

 例えば、楽天が展開する共通ポイント「楽天ポイント」を組み合わせてみる。セール期間で荷物量が急増しそうな時に、配送日をずらすことに同意した利用者に対してポイントを付与すれば、セール期間に荷物が集中することを防げ、配送事業者の負担も減る。楽天が自ら配送量をコントロールすることで、遅配や再配達といった物流業界を疲弊させる非効率な業務も減らせるはずだ。

 こうしたデータを活用した物流は、欧米を中心に関心が高まっているフィジカルインターネットを体現している。楽天が目指す新しい物流のカタチ。今後は、物流分野で新たなサービスを提供するスタートアップにも出資し、関係を深めていくという。

 配送する荷物をどこまでコントロールできるか。これが、これからのネット通販事業者の「勝者の条件」と言えるかもしれない。