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外国人に頼らなくては回らなくなっている現場が増えている日本。しかし、世界を見渡せば外国人の受け入れに力を入れる国は数多くある。日本国内でも同様だ。外国人材の争奪戦を勝ち抜くには、外国人が働きたいと思える職場環境や昇進制度を用意することが必要不可欠となっている。

※この記事は日経ビジネス2019年8月19日号特集「『ブラック国家』ニッポン 外国人材に見放されない条件」の関連記事です。詳しくは特集をお読みください。

 「財閥系の大手商社の内定を蹴って当社に入社してくれる外国人がいるんですよ」。留学生などの在日外国人向けに賃貸住宅の家賃保証などを手がけるグローバルトラストネットワークス(GTN、東京・豊島)の後藤裕幸社長は笑顔を見せる。

社員の7割が外国人というGTNのオフィス

 GTNの全社員のうち、外国人は7割を占める。多くが3~6種類の言語を操ることができる逸材で、各店舗での外国人顧客の応対のほか滞納した家賃の取り立てなど業務は多岐にわたる。企業にとっては喉から手が出るほど欲しい人材といえるが、大手企業の内定を蹴ってでもGTNを選ぶケースもある。離職率は7%と低い。

 しかし、GTNの離職率が低水準になったのはここ数年の話。2012年ごろまでは、離職率は50%と高かった。経験を積んだ外国人が次々と大手企業に移ってしまい、引き留めに苦戦していた。

 離職率を下げようと力を入れ始めたのが人事制度改革だ。それまでは一般的な日本企業のように、評価や昇進の基準は不透明だった。外国人が働く上で、どういう組織であればやる気が出るかなどをそれほど意識していなかった。そこでプロセスを透明化し社員のやる気を引き出そうとした。

 まず取り入れたのは360度評価制度だ。社員の評価システムを全員参加型にし、評価を偏差値で示すようにした。さらに年末には「GTN総選挙」と称したイベントを開催。その年に最も会社に貢献した社員を全社員で投票し、ランキング上位の社員を表彰する。毎年、上位は中国や韓国、ベトナムなどの外国人が占めている。

 昇進は会社が指名するのではなく、自ら立候補するシステムを導入。リーダー職への昇進を希望する社員は立候補後、自分の力で会社をどのように変えたいのかを、他の社員に向けてプレゼンしなければならない。立候補者はプレゼンを聞いた社員の3分の2以上の票を獲得しなければ、リーダー職に昇進できない仕組みだ。

 こうした取り組みを通じて離職率は7%に低下。優秀な人材を獲得できるようになり、新生銀行と外国人留学生を支援するファンドを立ち上げるなど事業を拡大している。後藤社長は「日本は人手不足だが、アジアでは若年層が多く就職難は深刻な問題だ。そのギャップをうまくつなぐことができれば面白いビジネスを生み出せる」と外国人の活躍に期待を寄せる。