人材の採用コストが高止まりする中、優秀な若手社員の退職に悩む企業は多い。日経ビジネス8月26日号「できる若手がなぜ辞めた 本当に効く人材定着の知恵」では、大手企業の「期待の星」だった若手社員が離職を選んだ理由と、彼らを引き留めるために企業が取るべき策を探った。
若手社員の離職理由として最もよく聞かれるものの1つが、「入社前の期待と入社後の現実のギャップ」。待遇や労働環境は決して悪くないにもかかわらず、「思っていたのと違う」「聞いていた話と違う」と言って退職する社員は跡を絶たない。こうした状況に対する有効な対策の1つが、「会社の悪い点まで含め、できるだけ多くの情報を事前に伝えること」だ。
待遇を平均値で公開
2016年、SES(システムエンジニアリングサービス)企業のエージェントグロー(東京・港)を創業した河井智也氏は、1つの決心をした。「給与も残業時間も仕事内容も、すべて正直に公開する」。手始めに、求人広告に平均昇給率や平均残業時間を掲載。社内システムでは昇給・賞与の基準や計算式も明らかにした。「当初はそうした数字を公開するのは怖かった」と語る河井氏だが、それでも平均値の公開に踏み切ったのは、前職での苦い経験があったからだ。

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