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人材の採用コストが高止まりする中、優秀な若手社員の退職に悩む企業は多い。日経ビジネス8月26日号「できる若手がなぜ辞めた 本当に効く人材定着の知恵」では、大手企業の「期待の星」だった若手社員が離職を選んだ理由と、彼らを引き留めるために企業が取るべき策を探った。

 毎年の大学生人気就職先ランキングに軒並みランクインするのが、大手総合商社。高倍率の競争をくぐり抜けて入社した新人たちは、海外経験や恵まれた待遇、高い社会的ステータスへの期待に胸を膨らませる。しかし、中には業界トップを争う企業で「期待の新人」と目されながら、3年未満で離職を選ぶ若手社員も存在する。総合商社A社を2年ほど前に退職した田代裕貴氏(仮名)もその一人だ。

 田代氏は有名私立大学に通学するかたわら、自ら語学学校にも通ってフランス語を習得。その実力は確かなもので、在学中に1年間のフランス留学も経験している。留学の前後に短期間で済ませた就職活動では、留学経験や語学力、コミュニケーション能力が高く評価され、商社以外も含め有名企業から多数の内定を獲得した。

同期の「成長株」が突然退社

 田代氏は結局、「ファーストキャリアとして最も有望だと考えた」A社に入社。入社後は自動車グループに配属となり、自動車部品の輸出などに関わる業務を担当することになる。2015~2016年頃の資源価格の下落により、A社では非資源事業の強化が急務となり、中でも自動車グループは全社の期待を背負っていた。当時、A社の若手社員は通常業務とは別に会社から研修用の課題を与えられていたが、田代氏はそうした課題でも同期の指示系統を取りまとめるなど積極的に活動。その結果、2年目には尊敬する上司の元で徐々に重要な仕事を任されつつあったという。