銀行が紹介するのは外国人材
食品工場などに外国人を仲介する事業を手掛ける人材サービス会社マックス(東京・文京)の正木研社長は、最近意外な人物と営業に行くケースが増えた。金融機関の融資担当者だ。融資先にマックスを紹介する動きが加速しているのだ。
こうした取り組みを始めたのは2年ほど前から。銀行出身の正木社長が営業先を開拓するために、当初はマックスから金融機関を誘っていた。しかし、18年春から状況は変わった。「金融機関から『一緒に来てくれないか』と声をかけられる機会が増えた」(正木社長)。大手銀行だけでなく、信用金庫など多岐にわたる金融機関から「融資先訪問に同行してほしい」と依頼が殺到する。
かつては金融機関が融資先に紹介をするのは、主に新たに顧客になる可能性がある企業が多かった。しかし今、企業を悩ませるのは売上高拡大よりも現場を回す人材の不足だ。人材仲介会社に依頼するだけでは集めるのが難しくなっており、外国人に頼らざるを得ない状況になった。どのエージェントに頼めば、不法滞在者ではない適切なビザを持った人が来てくれるのか。採用した外国人はきちんと働いてくれるのか。不安は絶えない。
そこに着目した金融機関が、外国人の派遣で実績のあるマックスを融資先に紹介するという動きだ。マックスの正木社長は全国を飛び回り、登録する3000人の外国人をパートやアルバイトとして紹介する。登録する外国人の時給は1100円程度と企業が日本人を直接雇用するよりも高いケースもあるが、「明日にでも連れてきてほしい」と頼まれることも珍しくない。
経済協力開発機構(OECD)の調べによると、日本の年間の外国人受け入れ数(2016年)はドイツ、米国、英国に次ぐ4位。カナダやオーストラリアなど移民で知られる国々をも上回る。日本では「移民」という単語への抵抗感が強く、在留資格の拡大などについて政府も「移民政策ではない」との建前を崩さないが、実質的には既に「移民大国」とも呼べる状況だ。
実際、人手不足に苦しむ企業やその現場では外国人材の確保へ動き始めている。ただ外国人材の多くが日本では当たり前の働き方や雇用慣行に不満や不安を持っている。成長へのイメージが持てて、能力や実績をフェアに評価する人事システムや日常生活も含めたフォロー体制が整っているかどうかなど、企業は採用した「後」が問われる。
日経ビジネス電子版の議論の場「Raise(レイズ)」では、日本が停滞から抜け出すために打つべき一手を考えるシリーズ「目覚めるニッポン」を始めています。外国人労働者の受け入れについても、「 [議論]外国人労働者、このまま受け入れを拡大すべき?」にて読者のみなさんの意見を募集しています。
外国人受け入れの是非のみならず、その前提となる雇用のあり方や働き方の課題についてなど、幅広いご意見をいただければと考えています。(注:コメントの投稿は有料会員限定です)
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