大卒型人生モデルは万能か。反対に、日経ビジネス8月12日号「見直せ 学歴分断社会」は、社会が揺らぐ中、「非大卒型人生モデル」が見直されている実情も伝えた。非大卒者の8割は、都市部ではない「ジモト」に残って職に就く。大卒型の詰め込み型教育とは異なり、本当に仕事に必要な能力を身に付けようと奮闘する人に迫った。
「床材を塗るのがとにかく楽しくて仕方ない」。リフォーム事業などを手掛けるライフタイムサポート(埼玉県越谷市)で働く鈴木辰弥氏(19)。同じ職場で還暦を超えた職人たちは親しみを込めて「たっちゃん」と呼ぶ。

勉強は苦手でも「今は本当に幸せ」
鈴木氏は中学時代、塾に週2回通っていたが「偏差値は40台でストップしたまま一向に上がらなかった」。埼玉県内の工業高校でもいわゆる赤点ばかり。通学途中にショッピングセンターへ立ち寄っては、授業をサボっていた。高校も結局、通信制へ転校した。
ライフタイムサポートはそんな鈴木氏の受け皿になった。事務所はワンルームの寮を併設、鈴木氏の自宅まで15分ほどで帰れる。金銭面では東京都内に住むと家賃だけで10万円弱はかかるが、今の環境ではほとんどかからない。同社の特長は「社員の家族と会社の近さ」だ。経営方針の発表会の際、社員の家族も呼ぶ。
龍竹一生社長は「社員の両親に、子供の成長を近くで見てもらえるようにしている」とし、孤独にならない枠組みが必要だと考えた。鈴木氏は「こんないい職場に巡り合えて本当に僕は幸せ者だ」と話し、仕事での還元を誓う。
ヤンキーインターン出身者 「大金持ちになって親孝行」
通信販売会社で働く久米凌太氏(24)も「元・やんちゃ組」。左耳に残る、向こう側が見えるほどの直径1センチのピアス痕がその証しと言える。
堺市出身の久米氏は中学卒業後、とび職などとして働いていた。その後、幼なじみに誘われて門をたたいたのが、今特集でも紹介したスタートアップ企業のハッシャダイ(東京・渋谷)が手掛ける「ヤンキーインターン」だ。
同インターンでは、地方出身の高卒生や非行少年たちの就労支援を目的に、営業職・エンジニア職の2つのコースを用意。最大6カ月間のインターン期間を設けて指導している。
通信機器の営業のトレーニングを受けた結果、久米氏の「今」がある。「28歳までに大阪へ帰りたい。大金持ちになって、親孝行したい」。歩合制の営業職をあえて選び、自分をとことん追い込むのだという。
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