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 国内製薬大手の2019年4~6月期の業績が総じて好調だ。今後の新薬開発にもつながりそうだが、楽観はしていられない。世界の製薬大手との競争では大きく後れを取っている。日本からメガファーマはもう生まれないのか。

※この記事は日経ビジネス8月5日号特集「1回の投与で2億円も 医薬品はなぜ高い?」の関連記事です。詳しくは特集をお読みください(有料会員限定)。

 国内製薬大手の2019年4~6月期業績が好調だ。第一三共は純利益が前年同期比81%増の433億円、エーザイが同76%増の216億円、アステラス製薬も同7%増の585億円となった。いずれも主力製品の国内外での販売が伸びた。アイルランド製薬大手シャイアーを買収した武田薬品工業は買収費用がかさみ、20年3月期の連結最終損益が3677億円の赤字見通しだが、血液がん治療薬の販売が好調で、赤字幅は従来予想(3830億円)よりも縮小すると7月31日に発表している。

シャイアーを買収した武田薬品のクリストフ・ウェバー社長は「グローバルでのリーディングプレーヤーになれる」と語っていた(写真:西村尚己/アフロ)

 薬価改定による価格の引き下げなどで収益環境が厳しさを増していた国内製薬業界。足元の好調な業績は、今後の新薬開発にもつながりそうだが、楽観はしていられない。世界の製薬大手との競争では大きく後れを取っている。

 世界ではメガファーマと呼ばれる巨大製薬企業が席巻する。2018年の売上高を見ると、日本勢との差は歴然だ。トップのスイス・ロシュの売上高は約6兆5000億円。2、3位の米ファイザー、スイス・ノバルティスも5兆円を上回る。日本勢はといえば、買収したシャイアーの売上高を一部計上して2兆円を超えた武田薬品を含めても、1兆円超えは3社にすぎない。武田薬品がシャイアーの業績を年間を通じて計上できるようになって初めて、売上高が3兆円を上回り、メガファーマの仲間入りを果たせそうだが、世界3位の医薬品市場を抱える割には日本勢の世界での存在感は薄い。

米国を中心にメガファーマがひしめく
●世界大手製薬と国内製薬の売上高比較(2018年)
世界トップ10 売上高
ロシュ(スイス) 6兆5447億円
ファイザー(米) 5兆9012億円
ノバルティス(スイス) 5兆7090億円
メルク(米) 4兆6423億円
GSK(英) 4兆1608億円
J&J(米、医薬品セグメント) 4兆4083億円
サノフィ(仏) 4兆1796億円
アッヴィ(米) 3兆5440億円
イーライリリー(米) 2兆6572億円
アムジェン(米) 2兆5696億円
出典:日経バイオテク
日本トップ10 売上高
武田薬品工業 2兆972億円
アステラス製薬 1兆3063億円
大塚ホールディングス 1兆2920億円
第一三共 9297億円
エーザイ 6428億円
中外製薬 5798億円
大日本住友製薬 4593億円
田辺三菱製薬 4247億円
塩野義製薬 3637億円
協和キリン 3465億円
出典:日経バイオテク

 なぜ、世界との差が広がってしまったのか。3つの要因がある。

 クレディ・スイス証券の酒井文義アナリストがまず、指摘するのは「業界再編の遅さ」だ。

 「ファイザーモデル」。有力な新薬候補を持つ企業をM&A(合併・買収)で取り込んで成長を遂げることを、製薬業界ではこう呼ぶ。米ファイザーが2000年以降、大型M&Aを繰り返し、規模拡大を進めてきたことに由来する。売上高ランキングで5位に入る英グラクソ・スミスクライン(GSK)も、00年に英グラクソ・ウエルカムと英スミスクライン・ビーチャムが合併して誕生した企業だ。

 日本では05年に山之内製薬と藤沢薬品工業が合併してアステラス製薬となり、同年には三共と第一製薬が経営統合して第一三共になった。だが、その目的は「外資が日本に乗り込んでくるのに対抗するため」(酒井アナリスト)。武田薬品のシャイアー買収はグローバル競争に打ち勝つための戦略といえるが、それまでは「海外に打って出るための再編ではなかった」と酒井アナリストは言う。