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 2018年春に本格化した米中貿易摩擦。一見すると1980~90年代に日米間で勃発したような、米国の貿易赤字解消のための闘争であるかのように思える。だが、今回は過去の貿易摩擦とは違う。根底にあるのは、これまで世界の覇者として君臨してきた米国が急激な成長を遂げる中国に対して抱く脅威。このまま突き進んだとき、40~50年後の世界はどうなるのか。米国を代表する著名経済学者2人の見立てを聞いた。

※この記事は日経ビジネス7月29日号特集「アメリカの実相 保護主義でも生き残る日本企業」の関連記事です。詳しくは特集をお読みください(有料会員限定)。

 一人目はケネス・ロゴフ氏。共著書『国家は破綻する 金融危機の800年』がベストセラーとなったハーバード大学教授で、元IMF(国際通貨基金)チーフエコノミストだ。

(写真:South China Morning Post/Getty Images)

現在の米中貿易摩擦をどう見るか。

ロゴフ氏:中国を米国が脅威に感じているのは今に始まったことではない。クリントン政権やオバマ政権でも中国の政策や体制を変えようと試みてきたがうまくいかなかった。そこでトランプ大統領が登場し、一連の政策を実施し始めた。表面化しただけであって、これは昔から両国が抱えてきた問題だ。

過去にも米国は旧ソビエト連邦や日本と対峙してきたが、今回はそれらとどこが違うのか。

ロゴフ氏:決定的に異なるのは、中国が(資本主義的な社会主義という)全く新しい体制で急成長を遂げてきた点だ。米国が手あたり次第、急成長を遂げて自身の覇権を脅かすようになった国をたたいているかというと、そういうわけではない。正直、米国がたたいたからといって、その国が低迷するほど米国が力を持っているとは思わない。

 日本も1990年代以降、経済成長が止まっているが、それは米国からバッシングを受けたからというより、中国や韓国といった近隣の国が台頭してきたことで競争が激化したから、と見るのがフェアだ。もちろん、米国の貿易摩擦も一因ではあるだろう。

米国はどのようにして中国との闘争に勝つのか。

ロゴフ氏:いくつかのシナリオがあると思う。ここで一つ言えるのは、ほとんどの人が考えているほど中国は急に世界の大きな脅威にはならないということだ。どの国を見てもそうだが、日本や韓国など、一定レベルまで成長するとそれまでの勢いを維持することができなくなり、成長が鈍化する時期がやってくる。中国もそうなると考えるのが自然だ。

 今後の20~30年の間に中国がそれほど経済的に成長するとは思わないので、20~30年後も米国がまだ世界最大の経済大国であり続けるだろう。また中国は急に成長してきたひずみから、どこかでファイナンシャルクライシス(金融危機)が起きないとも限らない。起きるとしたら、これからの20~30年くらいの間だろう。