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 「メーク・アメリカ・グレート・アゲイン(米国を再び偉大な国に)」を掲げ、保護主義に傾く米国のドナルド・トランプ大統領。米アップルや米インテルなどには中国との貿易戦争の影響も出始めている。一方で、米国内には中西部を中心にトランプ大統領を支持する人たちが数多くいる。

※この記事は日経ビジネス7月29日号特集「アメリカの実相 保護主義でも生き残る日本企業」の関連記事です。詳しくは特集をお読みください(有料会員限定)。

 かつて米国を代表する自動車メーカーの拠点として栄えたデトロイト。そこからクルマで2時間ほど南に下ると、オハイオ州を東西に貫く州道309号線に突き当たる。州道といっても反対車線のクルマがギリギリ行き交えるほどの狭い道。左右には広大なトウモロコシ畑と大豆畑が広がり、いつも通りの夏であれば人の背の高さほどのトウモロコシが黄色の実をたわわにつける。

トウモロコシや大豆の畑は豪雨の被害で荒れ地になっていた

 だが、今年は様相が違う。「6月に何度も大雨が降って洪水に見舞われたから、トウモロコシも大豆も大打撃を受けた。だからこの辺りの畑は荒地になっているだろう? 雨にやられたのさ」

 祖父の代から農業を営み、自身も農業に従事した後、数カ月前にリタイアしたというデービッド・シリングさんは、こう言って苦笑いを浮かべた。災害で打撃を受けたうえに、大豆やトウモロコシはトランプ政権の対中関税の報復で中国政府から25%の追加関税をかけられた(7月24日、中国政府は300万トン分の大豆輸入で関税を適用外に)。さぞ頭を抱えているかと思いきや、あっけらかんとした表情でこう言った。「この辺りの農家はこういう時のために皆、保険に入っている。災害と認められれば何も仕事をしなくても想定収入の4割はもらえるからね。たいていは何とかなる」

 これに加えて、ドナルド・トランプ大統領が進める農家保護策の一環として補助金が入る。しかも農務省は、関税による収入減かどうかを証明しなくても、収穫量を報告しさえすれば1農家当たり最大12万5000ドルを支給する。

 トランプ大統領の関税政策は、米国の農家を傷つけているとの報道が米国でも流れている。だが、シリングさんのあっけらかんとした表情が物語る通り、手厚い補助金が共和党支持者の多い中西部の農家の心をつかんでいる。