ブルーレット、サワデー、熱さまシート──。耳に残るキャッチコピーとともに数多くのヒット商品を生み出してきた小林製薬。だが、10年ほど前は発売直後しか売れない商品が増えていることに頭を悩ませていた。
そこで2013年に就任した小林章浩社長は、新商品の時期にだけ売れるのではなく、長期にわたって売れ続けるブランドやカテゴリーの育成にかじを切った。その育成の過程では、商品や販促施策に失敗があっても、じっくり育てることを優先している。失敗を許容するこの文化が生み出した成功例が、13年に参入した自動車用消臭芳香剤のカテゴリーだ。

自動車用消臭芳香剤の市場に参入した当時、小林製薬はトイレ用や部屋用の消臭芳香剤ではトップシェアだったが、自動車用だけ出遅れていた。競合がヒット商品を出し、市場が盛り上がるさなかに出した商品は、ことごとく売れなかった。
男性ユーザーを意識した黒基調の商品や、ドラッグストアで女性が手に取ることを想定したピンクの花型のクリップ状の商品などだ。それぞれ「かなりとがったデザイン」(17年から20年まで同カテゴリーを担当した振吉徹氏)で、ターゲット層を明確にして開発したが、空振り。振吉氏は「消費者の購買行動の実態と合っていなかった」と振り返る。
たしかにドラッグストアで購入するのは女性だが、使う場所は家族で乗るクルマ。つまり購入する女性は「家族で使うこと」を目的としていた。そのため、女性に受けるデザインでも売れ行きが不調だったと分析した。振吉氏は、「シンプルで、主張が強くなく、どんな人が使ってもおかしくないデザイン」をコンセプトに、17年に「サワデークルマ専用クリップ パルファムノアール」を企画し発売。計画の1.5倍の売り上げを達成するヒットとなった。


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