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 かつてないスピードで経営環境が変わる現在、新しい事業を生むには未知の領域に踏み出し、挑戦し続けるしかない。しかし、新たな挑戦に失敗はつきもの。挑戦の過程で起こる失敗にくじけることなく、成功につなげた例は多数ある。日経ビジネス3月2日号特集「失敗が事業を育てる」では、そうした事例から、失敗を成功に変える3原則を紹介した。そのうちの1つ「時間軸」を変えて成功しつつあるのが、清水建設のロボット開発だ。

 横浜・みなとみらいの高層ビル建設現場。作業員がいない夜中、フォークリフトをベースに作られた運搬ロボットが、石こうボードの天井材を台座に載せ、ロボットと連動するエレベーターに乗って上がっていく。作業場まで移動して天井材を置くと、もと来た道からエレベーターで下の階へ降りる──。清水建設が受注した建設現場では、自分で資材を積み込み、ルートを選んで目的地まで運ぶロボット「ロボキャリア」が活躍し始めている。

清水建設が開発した「ロボキャリア」。石こうボードを乗せる(写真:村田和聡)
自分でエレベーターまで移動する(写真:村田和聡)

 1トンもの重さになる石こうボードなどは、通常、台車に載せて複数の作業員で押して運んでいる。だが、自律走行できる清水建設のロボキャリアなら操作する1人だけで十分。人間は指定した位置に資材を置いて、ロボキャリアの操作をセットしておくだけで、朝現場に来れば、すぐに天井にボードを貼る作業を始めることができる。

 「上げたいものは、だいたい上げられるようになった」。開発を主導した清水建設の印藤正裕常務執行役員はこう語る。2019年3月にロボキャリアを横浜の現場に導入した当初は66%だった移動の成功率は、3カ月後には98%まで向上した。ボードだけでなく、エアコンのダクトなど様々な資材を入れたかご車も搬送できるようになり、人と協業する建設ロボットが実現した。建設現場の深刻な人手不足を補う強い味方だ。

 清水建設はロボキャリアのほか、溶接ロボットの「ロボウエルダー」、天井ボードを貼り付けたりボルトを取り付けたりする自律多能工ロボット「ロボバディ」を開発。これらのロボットは徐々に現場で活躍し始めている。

 「現場で使うロボットを作るべきです」。2016年、生産技術本部長だった印藤氏は、当時の宮本洋一社長に一連のロボット開発を直訴した。印藤氏の進言を受けた宮本氏の回答は「昔の轍(てつ)は踏まないように」。実は清水建設にとって、ロボット開発は初めての挑戦ではなく、約20年ぶりに復活させたプロジェクトだった。