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白物家電や住設のような事業ですか。

冨山氏:まあ、そうでしょうね。ああいった領域はいまだにシェアが高い。シェアが高いなりに、ちゃんと営業キャッシュフローを生み出せないと未来に投資できない。

そうなれば車載や電池も再挑戦できる。

冨山氏:車載や電池が引き続き投資対象かどうかは、執行側で議論するんでしょうが、僕はあまり口を出さないようにしている。執行側が決めることでしょう、基本的に。

数値目標は重要じゃない

パナソニックが2019年5月に発表した中期経営計画では、最終年度の全社の売上高や営業利益目標は開示されませんでした。この点はどう評価されていますか。

冨山氏:成長戦略に据えた(現場プロセスや空間ソリューションなどの)基幹事業は、稼がないといけない事業。しっかりと営業キャッシュフローを出していくのは大事なことだと思う。

 今後、投資していく領域がどうなるかに関して、数値目標を出すことがどこまで生産的かはよく分からない。日本の会社は中計で数値目標をたくさん置きたがる。

 米国の会社の多くは数値目標は置きません。イノベーションの時代においてはそっちのほうが自然だと思う。予測できないからイノベーションなので、計画的に何年も先まで数値を置くというのは、正直ちょっと違う気がする。

 なので、無理やり変な数字を置くよりも、会社として目指す姿やビジョンを設定して、そのためにどういった布石を打っていくか、どういった投資をしていくか、投資原資をどうするかといった成長ストーリーのほうが大事だと思う。そういった面では今回の中計はストーリーが分かりやすい。

ソニーや日立は10年以上かけて会社の形を変革してきました。パナソニックもこれから10年かかるものなのでしょうか。そんなに時間をかけていいものなのでしょうか。

冨山氏:もちろん、早ければ早いにこしたことはない。一方でとにかく10年かけてでも不可逆的な変革に向かうと、全員が腹をくくって頑張ることが大事。要は10年でも20年でも続けていくと思えるかどうかだ。

 企業の変革に携わっているからよく分かるけど、短期で決着をつけようとすると、みんな「改宗」したふりをする。とにかくこの2~3年だけ頑張ろうとなる。これでは、リバウンドのリスクが伴う。もう過去の時代は帰ってこないんだと思うことが大事だ。

経営陣がバトンタッチしても継続していくことが重要になる。

冨山氏:そうそう。よく失敗するのは経営陣が変わったときに、元に戻っちゃうケース。このときが一番リバウンドが起きやすい。僕らが関わった再生会社も、そこで戻っちゃうケースがだいたい半分以上ある。繰り返しになるが、10年、20年こういう変化の流れというのは不可逆的だと腹をくくるのが大事になってくる。パナソニックの経営陣はさすがに腹はくくれている。

それでも組織は元に戻りそうな気がします。

冨山氏:だからこそガバナンス(企業統治)が大事になる。次の経営者を議論するのは指名委員会。その中で「パナソニックが目指すべき長期的な会社のあり方」をしっかり共有していれば、フィットした人物を選べる。これまで話してきた会社の変革とガバナンス改革は同じ文脈なんですよ。

 社外取締役が何人いるかは、本質的な問題じゃない。トランスフォーメーションする際に一番ストレスがかかるのは経営陣。2~3年でうまくいくような話ではないので、必ず生みの苦しみに陥る。そんな簡単な話ではないんですよ。