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むしろBtoBこそ提案が重要になっていると。

冨山氏:サプライヤー側がベストプラクティスを提案して、それを(使い手側の)ユーザーが扱うというビジネスモデルになっている。使い手がスペックを事細かに指定する時代ではない。そのベストプラクティスを自らデザインする能力が問われる。従来とは異なる組織能力なので、自前で不足するのなら、M&A(合併・買収)で手に入れるか人材を採用しなければならない。

そういう面では、津賀さんは16年ごろから、外部人材の招へいに動いてきた。

冨山氏:(組織能力を変える必要があるという)認識はしている。

実際、組織体としてパナソニックはどれくらい変わってきていると見ていますか。

冨山氏:どうかな。本気で変わらなきゃいけないというモメンタムは感じますよ。今回、ヨーキー(米グーグル幹部だった松岡陽子氏)がチームとしてパナソニックに来てくれた。ああいう人たちは、あまりにもちょっと古くさい感じだったら転職してきてくれない。彼女たちにしてみれば、家の中をベタープレースにしたいわけでしょう。やはり20年ぐらい前のパナソニックだったらそもそも会話が成り立たず、来てくれなかったんじゃないか。

 今、つらい時期かな。(社内の人間は)ずっと野球をやってきたけど明日からはサッカーが大事、と言われてもつらい。しかも外部からサッカー選手が入ってきて自分よりも偉くなったりするので、(もともといる人間には)ストレスかもしれない。

パナソニックはまだまだ変革の過渡期ということですね。

冨山氏:まだまだ……。ただ変革のプロセスは丁寧に急がなきゃだめで。ソニーだって十何年かかっているので、パナソニックが2年や3年で急に変わるということはないと思う。逆に、経営陣がとにかく「この道よりほかに生きる道なし」と腹をくくって、野球もサッカーもできるという企業体に持っていく必要はある。

短期的思考では意見しない

冨山さんはパナソニックの社外取締役としてどう経営に関わっているのでしょうか。 

冨山氏:まさに今言ったような変革の話が一つ。会社の短期的な細かい話で意見するのは僕の仕事じゃない。それは執行部の仕事なので。

 何度も言っているように、非常に大きなパラダイムシフトがもうこの30年間起きている。この中で、パナソニックという会社の形がどうあるべきか、執行側と共にいろいろな議論をしている。あるべき世界観をつくっていくのは、外部の人間なので大事な仕事だ。

 それからもう一つは、トランスフォーメーションする際に長期的な観点に立って日々起きる変化がどんな意味合いを持つのかをモニタリングすること。事業の買収や売却という重要な意思決定の際に時代の変化からどういう意味を持つのかを意見している。

 財務的な観点では、四半期決算を重視しているわけじゃない。トランスフォーメーションの時代では、成長領域は多くがイノベーションを伴う。成長を追っていくとリスクは高く、投資負担も重くなる。その資金源をどうするかは問題。これを過度に借り入れに依存するのは危険で、やはり営業キャッシュフローで賄うしかない。

 パナソニックが新領域、イノベーション領域を探索するのはリスクが大きい。投資の原資として、営業キャッシュフローの創出力ってすごく大事。営業キャッシュフローをどれだけ潤沢にできるかという問いかけはいつもしている。そうなると、古くて赤字の事業ってやっぱりまずい。

現在、パナソニックにおいて営業キャッシュフローを稼ぎ出す事業はどこになるのでしょうか。

冨山氏:普通に今でもマーケットシェアの高い事業でしょう。昔から強い領域なんじゃないか。