全5878文字

冨山氏:これまでは野球というスポーツに適応してきた。組織や戦い方、働く人たちの人生の過ごし方まで野球型になっているわけ。急にサッカーをしようと思ってもそう簡単に適応できない。頑張ればサッカーに転じられる人もいれば難しい人もいる。そうなればサッカーに向いている才能を外から入れなきゃならない。

 さらに難しいのは、日本の電機大手はオールドモデルでまだ稼げる部分もある。もっと言えばオールドモデルで稼げないと、トランスフォーメーションに投資できない。日本企業の多くはいろんな種目をやっているようで本質は似通ったことをやっている。そこを変革するのはあらゆる企業にとって大変だ。

いきなりサッカーでトップになれない

 野球で世界レベルに到達した人たちは運動神経もいいし体力もある。だから素人よりは当然うまくなる。問題はデジタルトランスフォーメーションが起きている領域の競争は、いきなりグローバル競争が待ち受けていること。Jリーグで競っているわけじゃなく、いきなり欧州チャンピオンズリーグに出なきゃいけない。

 しかも相手は「GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)」。ピッチに立ったら目の前にメッシやロナウドがいるわけです。そりゃ、ボコボコにされるでしょう。

パナソニックはまさに野球からサッカーをやるくらいの変革の真っただ中というわけですね。

冨山氏:何もしないとボコボコにされちゃうから、トランスフォーメーションに挑んでいる。今のパナソニックの経営陣は、そのことに少なくとも気づいていて、何とかトランスフォーメーションしようと腹を据えて着手している印象はある。

冨山さんはパナソニックの社外取締役も務めています。津賀一宏社長の経営では、消費者向けの「BtoC」から法人向けの「BtoB」へのシフトなど会社の形を変えようとしてきました。

冨山氏:そうですね。BtoCかBtoBかという軸もあるけど、実はもっと底に問題がある。結局、パナソニックは独立したハードウエアを大量生産して、モノが売れる何らかのプラットフォームに乗っけて売るビジネスが得意だった。その文脈でテレビに賭けた。これまでも大量に売れるモノのに張ってきたと思うが、BtoCではテレビは最後だった。それは残念な結果になりましたと。

 BtoBは、早い段階から(単純なモノ売りでない)ソリューション型になっている。車載部品の場合、モノを介してある種のソリューションを自動車メーカーに提供している。ソリューション型のビジネスモデルにシフトしていく文脈の中で、次の成長領域として車載を据えたと感じている。

津賀さんの戦略そのものはどう評価されていますか。

冨山氏:戦略の方向性は間違ってないだろう。BtoBだろうが、BtoCだろうが、結局、ソリューション型のビジネスに変える必要がある。電機大手が提供できる本質がモノからコトへシフトしていく。それに早く気づいた企業が、次のステージにシフトできているわけですよ。

 問題はソリューションビジネスに移っていくためには、もともとパナソニックが持っていない組織能力が必要になってくる。そこで、いろいろな意味でもがいている感じじゃないかな。

モノではなくコトを提供するための組織にはなっていなかった。

冨山氏:既存の組織能力で対応できるかはやってみないと分からなかった。結果論として、対応できた部分とできなかった部分があるというのが正しい言い方でしょう。

 BtoB領域自体もどんどん進化し、高度化している。そのスピードがとても速く、ある意味、従来の下請け的なサプライヤーモデルではなくなっている。