総合力が我々の強み

それは利益が減っている家電のことをおっしゃっているのですか。

 家電だけではありません。各社内カンパニーでそういう要素があります。

 我々は事業部制で、各カンパニーの下には今、38の事業部があります。もともと私が社長になった翌年に48の事業部からスタートしましたから、痛みを伴いながら数を減らしてきた。加えて、(米業務用冷蔵庫メーカーの)ハスマンや(スペインの自動車部品メーカーの)フィコサ・インターナショナルのようなM&A(合併・買収)で加わった事業もあります。もともと1つの事業部だった電池は、リチウムイオン電池系など3つに分かれるなど、事業の中身もだいぶ入れ替わっています。

 それでも、38の事業部がそのままの形で順調にいく時代ではないでしょう。事業立地も変わりますし、我々の体質的にも古い部分もあります。事業部が入れ替わる様が、パナソニックが変わる様であることが見えるような形を意図してやっていますので、そういう意味では違和感はありません。ただ、ちょっともぐらの数が想定より多いな、と。それだけのことです。

その分、目標達成の時間が後ずれしているイメージですか。

 そういうイメージです。でも、マスコミではあまりよく書かれないですね、こういうところは。ただ、内部におりますと、そういうイメージなんです。

全然心配するような感じではないわけですか。

 半導体事業を外部に切り出したり、液晶パネルの生産終了を決めたりとか、自分たちとして競争力を維持し切れない部分をパートナーに委ねるようなことはあります。ありますけれど、すべての事業に目配りしながら、各事業や全社があるべき姿に向かっていけるようにコントロールされた状態で進んでいるのは間違いありません。

そもそもパナソニックはこれからどういう姿になるのですか。

 それはクリアに描け始めています。

 もともとパナソニックは、松下電気器具製作所からスタートして、その後、松下電器産業になって、戦後、松下電工や三洋電機が分かれていって、そうしてまた一緒になって、今がある。そういう百年企業なんですね。我々は非常に幅広い分野で奥深い専門性を持った技術、ものづくりをベースにお客様と向き合ってきた。そうした一つひとつの事業がパナソニックというブランドを表している。この総合力というのは、世の中探してもそう簡単には見当たらないでしょう。これが我々の強みだと思っています。

欧米的には、もうかる事業に特化して、あとは捨てるのが良い経営といわれます。パナソニックはあえてそうじゃないと。

 あえてそうじゃないという意味においては、稀有(けう)な会社だと思います。ほかの会社も元は人の暮らしにもっと密着されていたと思いますが、そこを我々は踏ん張っている。これはやっぱり、我々の会社の強みでしょう。

アナリストがこんな事業は捨てた方がいいといっても気にしないですか。

 それはちょっと違っていまして、今、言っていることがいい強みであると同時に弱みになってきているのも事実なんです。これから必要なのは引き算や掛け算なんですね。これをいかにうまくやっていくか。例えば、これまで家電は専業主婦の方を相手にしていたかもしれませんが、これからは共働きで子育て世代の方をサポートする必要があります。従来の我々の強みにイノベーションを掛け算して、社会の変化に応えていくイメージです。

 でも、従来型の事業がないと、「Why Panasonic?」ということが説明できないので、総合力は可能な限り維持しながら、掛け算ができるような形に引き算する。これを今、全社のいろいろな事業領域でやろうとしているんです。

ほかの会社でそうした取り組みをしている例があまりないからイメージしにくいのかもしれません。

 みんなから「分からへん」と言われるんですけど、人が簡単に分かるって、そんなに大事だとは私には思えない。我々は百年企業なので、次の10年、20年でへたったら困るわけです。これから新しい時代の変化に対応できる形に変えていくことは会社としての役割、責務だと思っています。

米グーグルなど外部から人を招くのも、掛け算のためですか。

 松下幸之助さんが創業された時期は会社には優秀な人材がそんなに多くなかった。結果として外部人材によって回してきた会社なんです。でも、会社が大きくなって有名になって一流大学から多くの人が採れるようになって、人事が純血主義に変わったんですね。

 私が社長になったとき、旧松下電工と旧三洋電機のリソースを有効活用することを求められました。両社とももう100%子会社になっていましたから。そこにどんな人材がおられるのかを見極め、その方々をどう活用して、パナソニックと入り混じりながら、今までになかったものを作っていくのか。これを絶えず考えてきました。

 加えて、グローバル化の中で、M&Aをしながら欧米の一流の経営者と入り混じらなければならない。

 では、パナソニック全体はどう変わらなければならないのか。部分だけ変わっても仕方ありません。より大きな視点で、今後のイノベーションを起こすリーダーはどういう人か、という視点で、外部人材を求めだしたんですね。

 その1つのきっかけになったのが、アナリストの片山(栄一)さんに来てもらったことです。こういう方が入ることで、(パナソニックは)どう変わるのか。やっぱり、結構、変わると手ごたえがありましたので、次に(ダイエーや米マイクロソフト日本法人の社長を務めた)樋口(泰行)さんに入ってもらった。樋口さんには代表権のある専務取締役として、(社内カンパニーの)コネクティッドソリューションズ(CNS)社という組織を従来の形から大きく変えてもらう。そして今、大きく変わりつつあるんですね。

 それでは、家電と住宅関係のところを引き算、掛け算をする形にどうすればいいのか。そのために来てもらったのが(独SAP日本法人のバイスプレジデントだった)馬場(渉)さん。馬場さんは1人で来たけれども、やっぱりもっと大きなチームで取り組もうということで、紹介いただいたのが(米グーグル出身の)松岡陽子さん、ヨーキーさんなんですね。

 私たちは今まで優秀な人材で純血主義でやってきたけど、パナソニックに求められるものが変わるなかで、創業時代の形に戻ったんです。何も純血主義でずっと来た会社じゃないというところに戻ることができたんですね。それは電工買収とか三洋買収の効果の1つかもしれません。

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