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 7月21日投開票の第25回参院選で、与党の自民、公明両党は改選過半数を上回る71議席を獲得した。ただ、非改選と合わせ、憲法改正に前向きな「改憲勢力」は国会発議に必要な3分の2には届かなかった。安倍晋三首相は9月に内閣改造・党役員人事を実施し、改憲などを見据えた陣を敷く構え。10月には消費税増税も控える中、企業経営者ら経済人は今回の結果についてどう受け止め、どんな政策を期待しているのか。

参院選後の安倍政権にどんな政策を期待しますか。

モルガン・スタンレーMUFG証券のロバート・フェルドマン・シニアアドバイザー(以下、フェルドマン):年金改革は喫緊の課題だ。国民の平均寿命が90歳に向かう中で、年金の支給開始年齢が65歳とは早すぎる。現在の年金制度が始まった1960年代に比べて、平均寿命が約15年伸びているのだから、支給開始年齢も75歳まで引き上げるべきだろう。さもなくば、年金財政が持たなくなる。

ロバート・フェルドマン氏
ニューヨーク連邦準備銀行、国際通貨基金(IMF)、ソロモン・ブラザーズアジア証券主席エコノミストなどを経て、1998年にモルガン・スタンレー証券(現モルガンスタンレーMUFG証券)入社。チーフエコノミストを経て17年1月現職。東京理科大の教壇にも立つ。

 これまでは、選挙における高齢者票を気にするあまり、支給開始年齢の引き上げは言いづらかった。だが与党が過半数を上回った今なら、痛みを伴う施策も打てるはずだ。チャンスは今しかないのではないか。

労働市場改革もセットで

 高齢者が働き続ければ、税収増のメリットも得られる。健康にも気を使うようになり、医療費の抑制効果、すなわち歳出減を期待することもできる。

しかし、現在の労働市場において、退職後の高齢者の受け皿となる働き口は限られているのではないでしょうか。

フェルドマン:支給開始年齢を引き上げるためには、労働市場改革をセットで行わなければならないだろう。それは、1つの会社で働き続けることを前提としない社会の実現にほかならない。

 現在、大企業内には会社にしがみつくあまり、社内の競争に敗れて活躍の場を失っている40~50歳の「社内失業者」がたくさんいる。社内の競争には敗れたが、大企業に入社できるだけあって、優秀な人材であることに変わりはない。

 大企業がこうした人材を手放し、人手不足にあえぐ中小企業や零細企業などに回せば、人手不足解消に役立つ。そのためには、早く徹底した能力給に基づく賃金制度を導入することだ。そうすればこうした人材は40~50代で大企業を去り、中小企業や零細企業で長く働ける、新たな活躍の場を見いだすだろう。大企業と中小企業の賃金格差が縮小する効果も期待できる。