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 海外売上高比率が6%の森永製菓で、米国事業が伸びている。引っ張るのは「ハイチュウ」だ。2012年ごろからメジャーリーガーが好んで食べるようになったのがきっかけ。国内での安定した販売で会社を支える定番が、突如として海外市場をも切り開くことがある。

発売から40年を超えるハイチュウ。上からグレープ、グリーンアップル、ストロベリー(写真=竹井俊晴)

 プレー中のガムを好むメジャーリーガーがハイチュウを手に取るようになったのは、レッドソックスなどで活躍してきた田沢純一投手が自分の好物だとしてチームメートに紹介したのがはじまりという。果実味の2層構造で適度にかみ応えがあって味が長持ちする。初めての食感にやみつきになる選手が続出してブームはファンに飛び火した。

 米国には08年に現地子会社を設立し、本格的にハイチュウの販売を始めたが、しばらくは浸透しなかった。米国の11年3月期の売上高は4億円。それが20年3月期見通しは62億円まで成長した。全額をハイチュウが担う。15年には現地工場が稼働し、小売り大手ウォルマートも取り扱いを始めた。

 ガムとキャンディーの間の食感を持つソフトキャンディー、ハイチュウは1975年に誕生した。キャラメル製造で培った技術を生かしながら開発し、ストロベリー味から始まり、これまでに約300種類を売り出した。森永製菓が営業利益と売上高への貢献で定める主力8ブランドのうちの1つ。国内で安定した販売を続けながら、米国のように海外で突如売れ出すことで再び成長軌道を描く好循環が続いている。海外ではテスト販売も含め計37カ国で販売している。

 米国で大リーガーに受けたのもムニュっとした粘りつくような独特の食感だ。入社以来30年にわたってハイチュウの開発に携わってきた大野芳裕・第二商品開発センターキャンディ開発グループ主席研究員は「ハイチュウは、ずっとかみ応えを追求してきた」という。

ハイチュウの開発に長年携わってきた大野芳裕氏(写真=竹井俊晴)

 かみ応えを決めるのは砂糖の再結晶化をコントロールする技術。材料の砂糖を加熱して一度溶かした後、どのような方法や条件で再び固めるかによってかみ応えが変わってくるという。

 15年前に特許を取得したのが食感を大きく変える転機になった。日本人の噛む力が弱くなったと言われる中、食感をより柔らかくする必要があった。だが、単に水分を増やすだけでは、柔らかくはなっても心地よいかみ応えは失われる。

 開発チームはハイチュウの砂糖の粒をより微細にコントロールする方法を生み出した。従来の製造工程を大幅に見直したが、心地よいかみ応えを維持しつつも、柔らかくすることに成功した。かみ出しの柔らかさや歯にくっつく具合まで数値化し、特許を取得している。

 味も変えている。かつてフルーツの味は粉末で出していたが、より本物に近づくよう、今では半液体状のピューレを使用している。色のついたフルーツの層も、以前は内側にあったが、13年に外側に出した。噛み出したときにフルーツの味をより感じるようにした。

 大野氏は1日に1回はコンビニなどに立ち寄るという。店の棚を見て回ることで時代の変化を感じ取り、ハイチュウがどういうポジションにあるのかを確認するためだ。定番ブランドといえども、進化し続けないと人気を保てない。大野氏は「砂糖の結晶化のコントロール技術を長年追求してきたが、終わりはない」と話す。