
PLC(製品ライフサイクル)は広く知られている古典的な理論だが、解釈には注意が必要だ。製品の導入期から成長期、成熟期、衰退期まで各段階に応じて売上高や利益が変わるため、企業はその時点に合わせてビジネスの目標、競合相手、顧客の設定などの戦略を変えることが求められる。しかしPLCをうのみにしてはいけない。売上高や利益が頭打ちだという理由で、まだ成熟期にある製品を衰退期と判断してしまうことになりかねない。
企業はマーケティング活動によってPLCを動かせることを意識してほしい。製品の見直し、価格やプロモーションの変更などいろいろなやり方がある。逆に言えば、何もしなければ製品は通常、PLCに従って衰退期に入る。だからこそ、PLCを変える発想を持っていなければ定番にはなりえない。
いったん定番ができたら「楽でいい」と考えている人がいるかもしれないが、それでは甘いと言わざるをえない。定番を持つ会社は、既存商品に革新とも言えるような、何らかの変更を常に施している。

定番をつくるのは時代に関係なく容易なことではない。「なぜこんな商品がなかったのか」というニーズは尽きることがない。「需要の飽和」という観点から定番が生まれにくくなっているという意見は理由として弱い。
データマーケティングなど需要をつかんでヒットさせたり、特定層に合ったものをつくったりする発想は定番をつくることと逆方向の考えだ。定番とは本質的に作り手の論理やコンセプトに重きを置く「プロダクトアウト」。「ライバルが何をしたから、こう対応しよう」といった目先の競争も定番を殺してしまう要素だろう。
「ニーズが多様化している」と考えているうちは定番はつくれない。表面的に見れば、いつの時代も社会は多様だ。「万人に共通する満たされていないニーズはないのか」という発想こそ定番をつくるための出発点であるべきだ。
定番は「何が良いものか」をそれ自身が定義でき、競合との比較から解放される。同じラインで生産できるから儲けも出しやすい。その逆は新製品。新たなプロモーションも生産ラインも必要になる。短期間で少しヒットする商品は商売として筋が悪い。目先の競争を意識しすぎると、新製品に逃れてしまうというのが企業の性ではあるが、この姿勢こそが定番の創造を難しくしている。
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