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「持つ」「持たない」を見極める3つの視点

「持たない」ことについて、「外部化」と呼んでいますが、その弊害はあるのですか。

松岡:外部化すればするほど、業務を外注化する際の手間である「取引コスト」がかかってきます。これはどの業者に頼むのか、価格はいくらにするのかといったことから始まり、この部分だけ融通してもらいたいけど対応してくれるのか、といった細かい部分まで含まれます。一つひとつが積み重なると、「取引コスト」は大きくなります。社内で抱える方が、外注するよりより負担がかからないこともあり、必ずしも外部化が最良の選択肢ではないことに気づくはずです。外に頼むということは、自分で制御できないということですから。自社の条件に見合う業者を探すのに時間を食ってしまう可能性もあるでしょう。

 もちろん、外部化することのメリットもありますから、一概には言えません。しかし、最近の日本企業は何でも外に出しすぎる傾向があります。

「持つもの」「持たないもの」はどのような視点で見分けるべきですか。

松岡:私は3つの視点で区別すればいいと考えています。1つ目は、自分で持つことのリスクが高いかどうか。リスクが高い業務や事業は外に出すべきです。分かりやすい例が製薬会社の研究開発機能でしょう。創薬は莫大なお金と時間がかかる上、成功するかしないか分からない、ハイリスク・ハイリターンな事業です。だったら、創薬ベンチャーを買収した方が早い、という判断が出てきます。

 きちんと戦略を持った上でこうした機能を内部化しているのであれば構いません。そういう企業もありますから。しかし、一般的に、自分でリスクをコントロールできないものは、外部化してしまった方が将来の見通しは立てやすくなります。

 2つ目の視点は、業務内容の難易度です。簡単すぎるもの、コモディティー化しているものもアウトソースしてしまった方が良いでしょう。経理や人事労務管理など、どの会社にでもある機能は外注してしまっても構わない。委託できる企業はたくさんありますから、競争原理が働いて外注コストも比較的低く抑えられます。

 3つ目は難しすぎず、簡単すぎない「ミドルリスク・ミドルリターン」の部分をどうするか。私はこうした部分こそ、自分たちでお金をかけて内部化すべきだと思っています。例えば今話題のAI(人工知能)人材、IT(情報技術)人材は不足気味であることもあり、調達コストが高い。それならば、自社で養成しようとする企業も増えています。

テレビ局がアナウンサーを抱える理由

 また、私が分かりやすい例として挙げるのが、テレビ局です。テレビ局は、お笑い芸人を自社で養成しませんが、アナウンサーは必ず社内で育成し、抱えますよね。要は、ヒットするかどうか分からないハイリスク・ハイリターンのお笑い芸人は外部から調達する一方、お金をかけて育成すれば、自社に貢献する可能性の高いアナウンサーは自分で持つわけです。

松岡さんの感覚として「取引コスト」は年々上昇しているのでしょうか。

松岡:限られた企業間を中心に商取引を行う「系列企業」「グループ企業」という考え方が以前の日本企業にはありました。しかし、経済のグローバル化もあり、この考え方は変わりつつあります。企業が「個」となり、自分でつながりを求める時代となりました。このことは同時に、取引コストが上昇していることをも意味していると思います。

 だからこそ、企業は何を外部化し、内部化するのか。自社の経営体力や経営目標を見ながら、戦略的に動く必要性が増しているのではないでしょうか。